【特集】時代に乗り遅れるな今こそ省エネ化③補助金を使って省エネ化

法律・トラブル不動産関連制度

入居者の光熱費を安くすることができる 補助金を上手に使って省エネ化

 省エネ賃貸住宅はなにも新築だけではない。既存の賃貸住宅についても、省エネ化を推進しようと国は補助金制度を創設している。補助金が出るうちに所有物件の省エネ化を進めるのも一つの手だろう。二つの補助金制度について紹介する。

先進的窓リノベ事業 補助金利用で高断熱窓へリフォーム

 既存住宅において断熱窓への改修を促進することで、光熱費の家計負担軽減、省エネ化、関連産業の競争力強化と成長を目指す環境省の「先進的窓リノベ2024事業」。1350億円の予算を確保し、断熱窓への改修に対して補助金の交付を行う事業で、3月29日から交付申請の受け付けを開始している。

 対象は、戸建ておよび集合住宅の窓ガラス交換、内窓設置、外窓交換。さらに、窓の改修と同一契約で断熱性の高いドアに交換した場合も補助の対象となる。

 補助額は実勢価格のおよそ2分の1程度の定額に設定されており、1戸あたりの上限金額は200万円。窓1カ所の工事ごとの補助単価に施工箇所数をかけた金額が補助額となる。改修する戸数が多くなれば補助金額も大きくなる。

 補助単価は住宅の建て方と窓の面積、工事により得られる熱貫流率に応じてそれぞれ定められている。熱貫流率とは部屋の内と外の温度差を1度としたとき、1㎡を通過する1時間あたりの熱量のことで、熱還流率の値が低いほど窓ガラスに結露が生じにくい。

 補助金を申請できるのは環境省に登録済みのリフォーム事業者。ただし、年度途中の登録申請も可能であるため、依頼した工務店らが登録事業者でない場合でも、登録申請をしてもらえば補助金を受け取ることができる。補助金は事業者から家主ら所有者に全額還元されるという流れだ。そのため、工事請負契約が結ばれない工事は補助金の対象にはならない。

 補助金による支援が見込める今こそ、物件価値と入居者満足度向上を目指して窓ガラスの断熱化を図るチャンスではないだろうか。

■補助金の対象となる窓とドアの工事

※環境省の資料を基に地主と家主で作成

一般社団法人全国賃貸住宅内窓普及協会 賃貸入居者から注文受ける穴を開けずに設置可能な内窓

一般社団法人全国賃貸住宅内窓普及協会(浜松市)

佐藤 元代表理事(65)

 「賃貸に住んでいるけれど、寒いので内窓を自分で付けたい」。こんな問い合わせが入るのが一般社団法人全国賃貸住宅内窓普及協会(浜松市)だ。同協会は、内窓により賃貸住宅の断熱化を推進する団体。注目すべきは、入居者でも内窓が設置できるように、穴を開けないで設置可能な内窓用ブラケットを独自に開発し提供していることだ。

 一般的な内窓は、すでにある窓の内側に窓枠をドライバーで取り付け、内窓をはめ込む。ところが、同協会が提供する賃貸用内窓では穴を開けずに専用のブラケットをはめ込むだけで、窓枠と内窓の取り付けが可能となる。

 この賃貸住宅向け内窓ブラケットを開発したきっかけは、毎月のように賃貸住宅の入居者から問い合わせがあったことだという。「住んでみたら、うるさく眠れない。引っ越すか、内窓を付けるか悩んでいる」という連絡だった。

「内窓を設置してほしいと管理会社に相談しても、対応できないと言われたという問い合わせが多いことから、ニーズを感じました」。こう話すのは、同協会の代表理事で、サカエアルミ(同)の代表取締役の佐藤元氏だ。佐藤氏は、内窓設置は騒音と寒さの問題を解消すると考え、20年に同業者の仲間に声を掛け同協会を設立した。

 開発した専用のブラケットは単価15万円からになる。それでも、これまで250件ほどを販売した。

 「近年、住宅の高断熱化が進む中、既存の賃貸住宅の居住者には対策の選択肢がない状況です。自分で費用を負担してでも設置したいと考える入居者がいることから、内窓に対するニーズは確実にあると思います」(佐藤氏)

既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業 補助金利用で省エネ型給湯器導入コスト削減

■補助金を活用した導入費用の目安

 賃貸住宅に対する小型の省エネ型給湯器の導入支援を行う、経済産業省の「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」。同事業では、省エネ型給湯器の導入コストを負担する賃貸オーナーの負担を和らげるとともに、機器の導入促進、省エネ住宅が選ばれやすい環境整備を目指す。その交付申請が3月29日からスタートしている。

 補助の対象となるのは、従来型の給湯器から潜熱回収型ガス給湯器「エコジョーズ」、または潜熱回収型石油給湯器「エコフィール」への取り換え工事で、上限までの範囲内で台数を乗じた金額を補助する。想定している取り換え費用は、機器本体と工事費を合わせて20万~35万円程度で、追いだき機能なしで1台につき5万円、同機能ありでは1台につき7万円が補助される。省エネ型給湯器から省エネ型給湯器への取り換えは対象外だ。

 補助を受けられるのは、❶1棟に2戸以上の賃貸住戸を有する建物❷建築から1年以上が経過している、または、❶か❷の住戸で人が居住した実績がある建物の条件に当てはまる既存の賃貸集合住宅。23年11月2日以降に着手した取り換え工事が1棟あたり2台以上の場合に申請可能だが、1棟あたり10戸未満の物件は例外として1台でも申請することができる。また、同年12月15日までの着工分についても、1棟あたり1台の申請が認められている。

以上のように、同事業を活用することで、オーナーの工事費負担を抑えながら、省エネ性能の高い物件へと改修できる。具体的には通常単身者タイプで、従来型給湯器導入に1万6655円追加しただけで、省エネ給湯器が設置可能だ。また、入居者側も光熱費は従来型と比べて年間1万2189円の節約となる。その結果、入居者満足度も高めることができるだろう。

 給湯器の交換を検討しているのであれば、経産省の事務局ホームページで補助金申請時に必要な書類や、補助対象機器の型番リストなどをチェックしておきたい。

■光熱費削減の目安

国土交通省 断熱性向上や遮音対策のガイドブックをネットで公開

▲国交省が作成した家主向けガイドブックはネットで公開されている

国交省では「賃貸住宅の断熱性能向上や遮音対策のための大家向けガイドブック」を作成し、インターネットで公開している。

同ガイドブックは三つの章で構成された30ページのボリュームがある。パート1では、断熱性向上や遮音対策で得られるメリットを漫画とともに紹介。パート2では断熱・遮音改修の取り組み方法の具体例を基に、工事費の目安などを紹介。パート3では断熱・遮音改修を支援する補助事業、認定制度・融資制度などを紹介している。

 23年3月から公開している同ガイドブックは、国交省が賃貸住宅の計画修繕を啓けい蒙もうする取り組みの一環で作られた。総務省の「住宅・土地統計調査」によると、民間賃貸住宅は持ち家と比較して腐朽・破損の住宅割合が高い。そのため、長期修繕計画が重要となってくるが、16年に国交省が行った「大規模修繕に関する意識検討報告書」では、長期修繕計画を作成している家主が23%だったのが、22年の調査では41%と割合が増加した。そのことから、計画修繕の必要性を訴求することに注力している。

さらに、21年度にスタートした新たな住生活基本計画で、民間賃貸住宅のうち、一定の断熱性能を有し遮音対策が講じられた住宅の割合を約1割(2018年)から2割(2030年)とすると掲げている。

「建物は計画的な修繕を行うことで良好な状態を維持することができますが、さらにプラスαでニーズに合わせた遮音・断熱などの改修を行うことは競争力を高め、入居者、家主の双方にとってメリットが大きいもの
と考えます」(住宅局参事官 [マンション・賃貸住宅担当]付課長補佐金子幸弘氏)

(2024年6月号掲載)

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