サブリースでは、家主の賃貸物件をサブリース事業者が借り上げ(マスターリース)、事業者が入居者と転貸借契約を結ぶ(サブリース契約)こととなります。
しかしトラブルが多かったことから、国土交通省はサブリース新法を制定。
サブリース事業者と勧誘者に対して、契約前の宣伝、勧誘およびマスターリース契約を交わす際の書面交付や説明に関して、ルールが適応されることになりました。
- サブリース新法の4つの規制内容
- サブリース新法一部改訂
- サブリース契約のメリット・デメリット
についてまとめました。
サブリース新法
サブリースとは
サブリース契約とは、サブリース事業者が家主の所有物件を借り上げることです。借り上げに際して、家主はサブリース事業者と賃貸借契約(マスターリース契約)を締結します。
物件を借り上げたサブリース事業者は入居者を募集し入居を決めた人と転貸借契約を結びます(サブリース契約)。
通常、転借料のほうが借り上げ賃料よりも高い価格帯になっています。
転借料と借り上げ賃料の差額がサブリース事業者の収益になります。(家主から9万円で部屋を借り上げて11万円で部屋を貸し出すことに成功した場合、差額の2万円がサブリース事業者の収益になる)。
またサブリース業者は通常、マスターリース契約だけでなく管理受託契約も家主と締結します。そのため管理受託にかかる手数料もサブリース事業者の収益となります。管理料の相場は、家賃の10~20%と言われています。
入居者募集から退去への対応まで一連の仕事にサブリース事業者が対応するため、本業があるなど賃貸経営に時間がかけられない家主に向いています。
なお一般的には、マスターリース契約からサブリース契約を結ぶまでの一連の流れをまとめて「サブリース」と呼びます。
サブリース新法とは
サブリース新法は、国土交通省が定める賃貸住宅管理業法適性化法の中の一つで2020年12月に施行されました。
サブリース新法には、サブリース事業者と勧誘者に対して以下のルールが適用されることになりました。
- 契約前の宣伝時の禁止事項
- 勧誘およびマスターリース契約を交わす際の書面交付や説明
サブリース事業者や勧誘者は、ルールに違反すると罰則や行政処分が課されます。6カ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金、またはその両方が課されます。
家主の中には賃貸経営の経験や専門知識に乏しい人も多く、サブリース事業者との間では、経験や知識などに大きな格差がある場合があります。
サブリース新法はサブリース事業者や加入者がサブリースのリスクやメリットを契約前に家主に充分に説明し、契約内容を誤認させないようにすることを目的として作られました。
規制内容
サブリース新法の内容は主に次の4点に分けられます。
- 誇大広告の禁止(第28条)
- 不当な勧誘の禁止(第29条)
- マスターリース契約締結前における重要事項説明および書面交付(第30条)
- マスターリース契約締結時は書面を交付すること(第31条)
家主が契約内容を正しく理解できるような、契約環境づくりを促す内容となっています。またサブリースの勧誘者についても定義されました。サブリース契約を結ぶか否かという家主の経営判断に影響を及ぼす立場であるためです。
金融機関やファイナンシャルプランナー、コンサルタントなどがサブリース事業者からの勧誘の委託を受け、かつ、家主に対してマスターリース契約を前提とした資産運用の提案を行い契約を勧めた場合、勧誘者と認められるようになっています。
誇大広告の禁止
サブリース事業者や勧誘者が、家主にサブリース契約を進める場合は、家主がどのように認識するのかに重点を置いてチラシや広告を作成することが義務になりました。
例えば、チラシにサブリース契約のメリットのみを強調する書き方をしてデメリットについて目立ちにくい表示を行っていた場合に規則の対象になる可能性があります。
またサブリース事業者が契約期間内で家賃の見直しや契約解除を行う可能性がある中、そのことを記載せずに「家賃保証」や「空室補償」と言った表現をして、契約期間中に家賃収入が保証されているかのように表現することを禁止しています。
不当な勧誘の禁止
サブリース事業者・勧誘者が家主に強引な勧誘をしたり、不正確な情報で勧誘しないように勧誘行為も規制がなされました。例えば、オーナーの承諾を得ずに午後9時~午前8時の間に、訪問や勧誘の電話をしなくてはいけなくなりました。
当然、声を荒げて乱暴に面会をしたりすることも禁止されています。
他にもオーナーがサブリースを締結しない、または更新しない旨の意思表示をした場合に再度、勧誘する行為も禁止されています。つまり家主の意思決定をゆがめるような勧誘の仕方や、契約解除を妨げる行為をすることは禁止されるようになりました。
重要事項説明の書面交付
マスターリース契約締結前における重要事項説明、および、書面交付。サブリース事業者はサブリースを締結する前に、家主に対して、書面を交付して重説することが義務付けられました。
重説を行う人は、賃貸不動産経営管理士資格制度の運営規定に基づく登録を受けている人などが望ましいとされています。
また書面について、重要事項説明が必要な特定事項のすべてを書面に記載して説明しなければならなくなりました。書面の文字の大きさなどについてもルール化されています。なお重要説明をオンラインで実施するのは可能となっています。
マスターリース契約締結時は書面を交付すること
サブリースは、契約期間や契約解除の条件などが複雑です。そのため契約締結後に、契約内容や条件をいつでも確認できるようサブリース事業者は契約締結時に家主に必要な事項を記載した書面を交付することを義務付けています。
重要事項説明が必要な特定事項
- マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所
- マスターリース契約の対象となる賃貸住宅
- 契約期間に関する事項
- マスターリース契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日、支払方法などの条件及びにその変更に関する事項
- サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
- サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
- マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
- 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
- 責任及び免責に関する事項
- 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
- 転借人に対する上記⑤の内容の周知に関する事項
- マスターリース契約の更新及び解除に関する事項
- マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項
- 借地借家法その他マスターリース契約に係る法令に関する事項の概要
引用:国土交通省公式サイト
契約内容変更の際も書面説明が義務
国土交通省によると、サブリース新法施行後も、家賃の減額を含む契約変更時にサブリース事業者からの説明がないというトラブルが発生しているといいます。
そこでマスターリース契約を結ぶ際の重説と書面交付の義務について、ガイドラインの改定が行われました。さらに、新規契約のみならず、マスターリース契約の内容を変更する際でも重説および書面交付を行うことはサブリース事業者の義務であると明確にしました。新法施行前に締結した契約を変更する場合、すべての事項について重説・書面交付が必要になります。新法施行後に締結した契約の変更の場合は、変更箇所のみ重説・書面交付で足ります。
サブリース契約と管理委託の違い
管理委託契約とは、家主が管理会社と管理委託契約(不動産会社側からすると管理受託契約)を締結します。
管理会社は賃貸借契約の締結のサポートを行うことはありますが、契約の当事者は、家主と入居者であることに注意する必要があります。管理委託をした場合の管理会社の収益は、管理手数料で家賃の5%が相場といわれています。
入居者の募集は、管理会社が仲介会社に依頼したり、その管理会社が仲介業務も行っている場合は管理会社自ら入居者を探してくれます。その際は管理手数料とは別に、入居募集に掛かる料金を家主に請求することになります。
サブリース契約と管理委託の対応内容比較表
サブリース事業者 | 管理委託 | |
入居者募集 | 対応する | 対応する |
入居者への対応 | 対応する | 対応する |
建物の清掃 | 対応する | 対応する |
設備の点検 | 対応する | 対応する |
家賃集金 | 対応する | 対応する |
原状回復費用の支払い負担 | 契約によってはサブリース会社 | 家主 |
空室時の家賃の支払い | 対応する | 対応しない |
手数料 | 満室想定家賃の10~20% | 家賃の5%程度 |
更新料 | 家主は受け取れない | 契約によっては家主が受け取れる |
礼金 | 家主は受け取れない | 契約によっては家主が受け取れる |
サブリースのメリット
空き室・滞納時も家賃が入る
サブリース契約の最大のメリットは、家賃の入金が確定していることです。サブリースはサブリース事業者が物件を借り上げるため、所有物件が実際は空室だったとしてもサブリース事業者からの家賃が支払われます。
一方管理委託の場合は空室であると賃料が発生しないことから、当然家主の家賃収入は下がる事態になります。入居者に家賃滞納があった場合も同様です。
滞納により家賃入金がなくとも、サブリース事業者が家主に家賃を払うため、家主にとって問題がありません。
未入金の家賃の取り扱いについてはサブリース事業者が入居者と連絡を取るなど対応してくれます。サブリースの方が家主にとって空室時にリスクが低く、魅力的です。
入居者募集はサブリース会社が行う
サブリース会社が空室対策を行ってくれます。サブリース事業者の収益の一つは転借料と賃料の差額です。そのため、いかに早く、高額な家賃帯で成約できるのか、実質的に空室対策を行うのがサブリース事業者になります。
なお空室が続くと、サブリース事業者は家賃収入が入らないだけでなく、家主に家賃も払わなければならないため、持ち出しが多くなり、経営悪化が懸念される事態になります。
苦情や退去への対応はサブリース会社が行う
サブリースの場合、建物の所有者である家主は入居者と契約関係はありません。サブリース事業者が貸主となって、入居者と点貸借契約を結ぶからです。そのため仮に入居者からの苦情があった場合に対応するのは、サブリース事業者です。
退去の際の手続きも、サブリース事業者が行います。原状回復についてはマスターリース契約の契約内容によって家主が負担するか、サブリース事業者が負担するか異なるため注意が必要です。
前述したとおり、家賃滞納時の入居者への対応や家賃集金もサブリース事業者が行います。入居者への対応が不要という点では、管理委託でも同様ですが、家主にとっては大きいメリットになります。
建物・設備管理はサブリース会社が行う
サブリース契約をする場合は、管理委託契約が含まれています。そのため所有物件の清掃や設備の定期的な点検もサブリース事業者が行います。
サブリース契約のデメリット
将来賃料減額の可能性がある
サブリース契約は、サブリース事業者が家主から物件を借りている契約のため、サブリース契約期間内は、家主に対し、全戸分の家賃が入金されます。
しかし家賃の金額は、サブリース事業者が家主に最初に説明したときや、契約したときの設定から変更して減らしたい(減額したい)という要望を書面や口頭で伝えることがあります。
サブリースは多くの場合、契約期間内の最初の数年間は固定賃料を支払うとされます。しかしこれが過ぎた後は、サブリース事業者が物件を借り続けるかも含めて、契約内容を見直せるという内容になっているケースが多いのです。
それは、建物の築年数や物件周辺の相場の変化から、契約当初の家賃設定のまま一括借り上げを続けると、賃料が高額過ぎて、逆ザヤになることをサブリース業者が恐れているからです。
そのためサブリースをする前に、家賃減額の交渉が起こる可能性があることを念頭に置く必要があります。
またマスターリース契約の締結前にサブリース事業者から事業計画書を受け取った際は、収支計画・ローンの返済計画をチェックし、問題がないかを確認しておきましょう。
家主からの契約解除は困難
ほかの注意点として、賃貸借契約の解除が困難なことも挙げられます。家主はサブリース事業者と賃貸借契約を結びます。そのためサブリース家主と事業者との間には、借地借家法が適用されます。
借地借家法の下では、家主が賃貸借契約を解除したい場合は、契約期間満了の際でも正当事由が必要となります。正当事由とは契約を解除せざるを得ない事情のことです。
例えば、建物の老朽化により賃借人の安全面を考えると契約を解除して新しく建て直す必要がある場合がこれにあたります。
借地借家法は賃借人保護の観点があるため、基本的に家主よりも賃借人の事情のほうが考慮されやすいのです。サブリース会社からの家賃減額交渉があったとき、契約を解除して、よりより条件でサブリース契約してくれる会社を探そうと思う人もいるでしょう。
しかし家賃減額交渉を拒否したいということは、契約解除の正当事由に該当しないため契約を解除する事は困難です。なお家賃の交渉について、家主は家賃を上げたいという請求をサブリース事業者にすることができます。
仮に、契約時から経年していても賃貸のニーズが上がっていると家主やサブリース事業者が判断した場合、家賃を上げることを提案しても問題ありません。
まとめ
サブリース新法について以下を解説しました。
- サブリース新法の4つの規制内容
- サブリース新法一部改訂
- サブリース契約のメリット・デメリット
サブリース契約やサブリース新法についてしっかり理解することで、トラブルを事前に防ぐことができるようになります。
家主と地主編集部では、家主さんになるために必要なさまざまな法律の知識についても特集しています。
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