施主⽀給で建築費を抑えてIOT設備導⼊
⼟地購⼊費⽤も含めて利回り10%を実現
スマートフォンやタブレット端末で家電を遠隔操作できるIT技術を取り入れたIoT賃貸住宅で、表面利回り10%を実現したのは多喜裕介オーナー(富山市)。あいの風とやま鉄道線小杉駅から徒歩16分、富山県道44号富山高岡線からは道を1本入った場所に立つ「SPHERE(スフィア)B棟」は2023年9月に竣工した。木造2階建て重層長屋で全6戸の同物件は、多喜オーナーにとって18年に新築した物件に続く2棟目のIoT住宅だ。
外出中でも来客があるとスマホで対応したり、エアコン・給湯器のスイッチを遠隔操作したりできるほか、居室内からはスマートスピーカー経由で⾳声での操作が可能。同物件では初めてデジタルサイネージ(電子看板)も導入した。「部屋に備え付けたタブレット端末にごみ出しの日時や天気予報などを表示するように自分でプログラムを組みました」と話す多喜オーナー。元SE(システムエンジニア)という経歴の持ち主だからこそできたことだ。
また、駐車場には電気自動車(EV)用の充電設備を設置した。「後付けするよりも低コストですし、新築時であればEV充電に使用した電気代は各住戸の支払いになるように電源を統合することができるのです」と多喜オーナーは説明する。これらの設備を導入した理由は、やはり周辺物件との差別化のためだ。実際、内見者からの反応はかなりいいという。
▲スマートロックは指紋・暗証番号・スマホなどでも解錠可能
デジタルサイネージとドアホンは1カ所にまとめた▲
差別化のためとはいえ、IoT設備の導入にはコストがかかる。建築資材や人件費の高騰により建築費が上がっている中、土地代を含めても表面利回り10%を確保するために多喜オーナーが取った手段は資材の施主支給だ。壁材やテレビ台、洗面化粧台、トイレの便器などを、可能な限りインターネットの通販サイトのセール期間を狙い、壁材として使ったタイルはフリマ(中古品売買)サイトやオークションサイトを利用して地道に買い集めた。
▲ワークトップ(天板)とシンクに人工大理石を使用したキッチン
▲洗面所の天井部に物干しざおを設置
窓があることでユニットバスも明るい雰囲気▲
工夫は建築費の圧縮だけではない。「どんなにいい物件でもポータルサイトで見つけてもらえなければ内見につながらない」と考えた多喜オーナー。雨が多く室内干しが当たり前の北陸ではサンルームを設けることが一般的だが、代わりに浴室乾燥機を設置した。これにより、ポータルサイトでの検索率の向上だけでなく、居室を広くすることもできた。さらに、浴室の隣の洗面・脱衣所には室内物干しざおも取り付け、洗濯してから乾燥までの動線を良くした。
家賃は周辺相場と同等に抑えることで値ごろ感がアップし、竣工後1カ月で満室まで残すところあと1戸となった。
【物件概要】
物件名:SPHERE(スフィア)B棟
所在地:富山県射水市
構造:木造2階建て
戸数:6戸
竣工年:2023年9月
間取り・広さ:1LDK 32.42〜39.90㎡
家賃:5万8000〜6万2000円(管理費込み)
(2024年1月号掲載)
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