土地活用のプレーヤーに迫る

土地活用パーキング#駐車場#遊休不動産

車好きの社長が徹底してこだわる顧客満足重視の時間貸し駐車場

 時間貸し駐車場の運営会社は約100社あるという。運営会社選びのポイントは、活用する土地によって形状が違うことを考慮して、利用のしやすさとオーナーの収益性を兼ね備えた時間貸し駐車場の運営ができるかどうかだ。「顧客満足」にとことんこだわって時間貸し駐車場を展開しているのが、コインパーク(東京都新宿区)だ。同社の富田栄造会長兼社長(以下、富田代表)は、利用のしやすさとクレームの解消に注力し、時間貸し駐車場事業を展開している。

コインパーク (東京都新宿区)
富田栄造会長兼社長(77)

全国で1665施設展開

 コインパークは時間貸し駐車場を、全国で1665施設、1万5133の車室(6月18日時点)を運営する。設立して30年がたつが直近6年で運営車室数は倍増している。

 同社が最も注力するのは、その地形に合った最適な駐車場にするためのレイアウトだ。「当社ではレイアウトのことを『図面』と呼ぶくらい、1㎝単位で考えます。利用者にとっては少しでも車と車の間が広いほうがいいですよね」。同社の富田代表がこう話すほどこだわり抜いて設計するという。

 土地によって地形はすべて異なる。そのため同社ではできるだけ土地の形状に合った駐車場を造るように3回図面を作成して検討する。止めやすくて、降りやすいかを常に考えながら最初は営業部、次は設計部、最後に社長が確認して、決定する。

 図面作成の難しさは、利用のしやすさと収益確保を両立させることにある。例えば、詰めれば4台入るが、3台にしたほうがゆとりはあるというケース。台数を減らせば収入が減り、オーナーへの賃料支払いが厳しくなる。そういうスペースのないところも、うまくスペースが使えるように徹底して考え工夫をする。また、これまで蓄積してきた設計のデータも活用しながら、運転手が見つけやすい看板の位置や正面の位置などを決める。

「お客さまにここがいいよねと思われるような駐車場を造らないと、この駐車場事業はお金を支払ってもらえません。当社のサービスが適正価格であれば、お客さまに喜んでお金を払ってもらえます。一方、オーナーに収益面で喜んでもらうためにも、当社はやはりベストの賃料を出さなければならないのです」(富田代表)

▲利用のしやすさと収益性を追求した同社の時間貸し駐車場

メンテナンスは自社で実施

 同社のもう一つのこだわりは管理体制。具体的には、メンテナンスを自社で実施している。 機械の不具合や故障などのクレームにつながりやすいメンテナンスは特に重視。その一環として、社員は機械メーカーの研修を受けている。機械は3年や5年で故障が発生すると、部品を取り換える必要が出てくる。同社では社内のシステムで各施設の設置経過年数を管理し、故障が発生する時期を推定。どの部品がいつ必要になるかをデータ管理していることで迅速に対応できるのだという。

「クレームが少ないということは、お客さまに迷惑をかけていないということ。クレームの内容は故障だったり、使い勝手の悪さだったりさまざまですが、そのクレーム全部をつぶしていくのです」(富田代表)

 またリニューアルも都度、実施している。看板がくすんで古さを感じる場合は貼り替える。精算機のボタンの文字が少し消えて薄くなっていたら取り換える。駐車スペースのラインが汚れたら引き直すという作業をしている。

「世の中はどんどん変わっていくので、古い施設でも新しくしていかなければなりません。新しくできたもののほうがいいと言われるようなことがあってはいけないのです。同じお金をもらっているわけですから、常に満足していただけるような施設にしていくべきだというのが、当社の良心なのです」

 こう話す富田代表は、同社を設立する前にホテルやレストランなどの経営に携わっていた。ホテルやレストランも時間貸し駐車場も、ビジネス全般的に共通しているのは、対価を払うに値するサービスを提供しなければならないという点だ。

 レストランは、感動を売る場所だという。店の雰囲気を気に入り、料理をおいしいと思って食べてくれても、いざ会計のときに来店客が高いと感じたとすれば店に対する満足度は下がってしまうのだ。
 富田代表はプライベートではカーレースにも出るほど、車の運転も車自体も好き。「車が好きなだけに時間貸し駐車場で自分が嫌な思いはしたくないのです。だからこそ、自社の駐車場では顧客満足にこだわり続けます」(富田代表)

 今後も利用者とオーナー、そして同社が「三方よし」となるように駐車場事業を展開していく。

(2024年8月号掲載)

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