【特集】非住宅ではじめる 遊休地活用ビジネス第六弾:④スペースシェアリングサービス

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スペースシェアリングサービス / akippa

駐車場マッチングビジネス需要拡大
フランチャイズ店舗での活用事例も増加

 使っていない空きスペースをネット上で簡単に貸し借りできる駐車場予約アプリ「akippa」を提供するakippa (大阪市浪速区)。予約可能なスペースは常時3万5000 か所以上、登録者は累計350万人を突破している。使い勝手の良さなどからFC店舗でも貸借 両面で利用しているケースもあるという。

akippa(大阪市浪速区)
金谷 元気社長

スペース常時3万5000か所以上
「非日常」だけでなく「日常」使いも

  全国展開している大手うどんチェーン。ロードサイドにある繁盛店では、ランチタイム時にはすぐに駐車場が埋まり、特に土日は、家族連れを中心に沿道にまで車列が並ぶことも珍しくなかった。混雑する駐車場を見て、あきらめてUターンする車も多かったという。決して広くはないスペースにもかかわらず、土地柄、車で勤務する従業員も多かったことが大きな要因だった。

▲ネット予約して駐車でき、誰でも簡単にシェアできる

 

 売上機会の損失と、近隣住民への配慮や安全面に頭を悩ませていた同店舗は、そこで「akippa」に会員登録。近隣の空きスペースを従業員向けとして一時的に利用することで、問題を解決したのだった。今では、同じ問題に悩む同チェーンの他店舗でも、「akippa」に登録している。

 一方、長野県を中心に30店舗以上展開しているラーメン店。こちらは一部の店舗を閉店から翌朝9時の営業開始時まで、店舗駐車場の一部を登録している。夜間に近隣住宅に訪れる家族や友人など、定期的に利用されている。

 このようにakippaが展開している駐車場予約アプリ「akippa」を活用するチェーン店が増えているという。駐車スペース不足の解消はもちろん、店舗の駐車スペースをシェアすることで、収益を得るなど、借り手・貸し手両面での注目が集まっているのだ。

 金谷元気社長は話す。「これまではスポーツ観戦やイベントなど『非日常』で利用していただくケースが多かったのですが、近年は用途が幅広くなってきています」。

 旅行の復活に伴って、観光地に近いホテルチェーンでも、「akippa」を通じて付帯駐車場を貸し出すことで、車で訪れる観光客の利用を獲得する例もあるという。

 同社のサービスは、契約されていない月極駐車場や個人宅の車庫・空き地・商業施設などの空きスペースと、イベントなどで一時的に駐車したい人とのマッチングビジネス。専用アプリを通じて予約することで駐車でき、誰でも簡単に駐車場をシェアできる。スペースの貸し手は、利用者ドライバーが支払った駐車料金から手数料を除いて料金を受け取る。貸し手・利用者とも、登録料や月額費用は一切不要だ。料金は貸し手側が決めることができるほか、同社が需給予測に合わせて値付けするケースもある。

▲空き駐車場の一部を貸し出すことでオーナーの収入も上がる

 スペースの貸し手は、個人はもちろん事業所など多岐に渡る。利用者はスポーツ観戦・ライブ・レジャー・旅行などの「非日常」や、買い物・家族知人宅訪問といった「日常」など、こちらも様々だ。

「例えばサッカーの名古屋グランパスの試合がある時は、スタジアムから徒歩30分圏内に1000台以上のスペースを開拓、確保しています。今年開業した北海道のエスコンフィールド周辺など、これまでに31のスポーツチームと連携し、駐車場不足や渋滞解消、交通分散に繋げています」(金谷社長)。

 自治体との連携も活発化しており、現在までに16か所と連携。夏には花火大会開催時に、地元自治体からの要請で、同社が近隣の駐車スペースを確保することもあったという。

 「こちらも交通混雑の解消はもちろん、自治体が所有する遊休地の活用、周辺地域の賑わい創出などでご協力させていただいています」(金谷社長)。

19年にSONPOグループ傘下に コロナ禍でイベント以外の需要創出

 同社は営業代行事業をメインに2009年創業。2014年に現在のサービスをスタート、来年10周年にあたる。当初は地元大阪でのドミナント戦略を進めてきたが、徐々に東京やその他の大都市圏にも進出。2019年には損保大手のSONPOホールディングス(東京都新宿区)が株式38・4%を取得、同グループ入りすることで更なる成長が期待されていた。

 主にイベント需要などを獲得してきた同社だが、コロナ禍により状況が一変。2020年にはイベントが消滅してしまい、売り上げは前年比1%減少、月額数千万円もの赤字が続くなど、一転して苦境に陥った。
同社のビジネスモデルは、駐車料金の約半分を手数料として徴収するの。決して単価は大きくないが、損益分岐点は月額2億円と言われている。イベントの有無で大きく売り上げが左右されるビジネスからの脱却を図ることが急務だった。

 「そこで徹底的に「需要データの見直し』を行いました。すると利用者には思いのほか、通勤需要など日常使いが多いことが分かりました」(金谷社長)。

 コロナ禍でソーシャルディスタンスが叫ばれる中、バスや電車を避ける人が目立つようになっていたのだった。

 同社は、こうしたデータを基にホームページなどで、新たな「akippa」の使い方を大々的にPR、周知を図った。駐車スペースを開拓する代理店や営業マンも、オーナーにこれまでにない需要を説いて回った。結果、駐車スペースの登録は、1・5倍、アプリ登録会員も約2倍に増加したという。

 「駐車場のシェアリングサービスの新たな需要を掘り起こすことができたのです」(金谷社長)。

 コロナの収束に伴って、徐々に売り上げは復活。2022年の年明けからはイベントも復活したことで、春には前年同期比130%と黒字化を達成したのだった。

 現在では、利用目的のうちイベントが3分の1、通勤利用が4分の1を占めるようになり、安定的な売上を確保している。

 同社は2026年には駐車場台数ナンバーワンを目指していく考え。既存の駐車場ビジネスよりも収益力は決して良くないことから、参入障壁は高い。むしろ、コインパーキング会社からも、協力により稼働率向上を期待されているという。

 「当面は会員数100万人、10万か所の登録を目指していきます。将来的には、EV充電器を設置しシェアするなど、『移動のお困りごと」解決企業としていきたい」(金谷社長)。

(2024年11月号掲載)

 

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