【特集】狭小地・変形地の活用法[後編]④:区画整理地内の狭小地

土地活用賃貸住宅

狭小地や変形地での賃貸物件の新築事例を紹介する。今回は限られた敷地内でさまざまな規制をかわして延べ床面積や専有面積を確保する例が見られた。

事例4
区画整理地内の狭小地 ファミリー向け3戸で利回り8・4%

ポラスグランテック(埼玉県越谷市) 営業一課
佐久間哲也主任(31)

 ポラスグランテックが設計・施工を行い22年6月に完成したのが「ララ・カノン」。埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線南鳩ヶ谷駅から徒歩8分で、区画整理の使用収益開始に伴って建築された。

 敷地面積は122㎡。木造長屋の3階建てで、住戸は1フロアに1戸ずつ、2LDK2戸、3LDK1戸という、同駅から徒歩10分圏内では数少ないファミリー向け物件だ。

 総事業費は約4800万円(税・諸費用込み、土地代は除く)。完成当初から強気の家賃設定で、中でも3LDKは周辺より5000円高く募集した。現在は満室で、家賃は3戸の平均で1戸あたり11万2500円、表面利回りは8・4%だ。

▲区画整理地内に立つララ・カノン

 同物件が初めての賃貸経営だった家主に向けて、同社は企画提案の初期段階で周辺の市場調査を実施。その結果、単身者向け物件が飽和状態だった半面、ファミリー向け物件は競合が少ないうえに一定の需要が見込めることがわかった。

 そこでターゲットをファミリーに設定。専有面積をできるだけ広く取るために、共用部を必要としない長屋を選択した。同社営業一課の佐久間哲也主任は「近くに月極駐車場や1日貸しのコインパーキングがあったことから、あえて駐車場を設けませんでした。入居希望者にも納得してもらうことができました」と振り返る。

 各戸の面積は1階住戸が2LDK・約56㎡、2階住戸が2LDK・約67㎡、3階住戸が3LDK・約82㎡。2〜3階は北側と南側の2面にバルコニーを設けている。

 このほか、ルフージュと同様に住宅設備に力を入れた。例えば、バスルームは分譲住宅で利用されることがある1坪タイプのものを導入している。

 ちなみに、区画整理の使用収益開始に伴って賃貸物件を新築する場合に注意したい点について、前出の河西課長は次のように指摘する。
 「区画整理の工事の間に使えなかった土地が使えるようになるため、収益物件が複数建てられて競合が増えます。間取りなどほかの物件と差別化することが重要です」

2棟計画から賃貸併設に変更し6戸確保
環境建築設計

▲VIENTO外観。1〜2階の左から3戸が賃貸住戸。1階は長屋形式でそれぞれ門扉付きの専用庭の奥に玄関扉がある

 環境建築設計が設計した「VIENTO(ヴィエント)」は、小田急電鉄小田原線経堂駅から徒歩7分の場所に立つ。木造3階建てで、家主が住む住戸に2階建ての賃貸住戸を併設した物件だ。

 敷地面積は約205㎡(62坪)で、当初は家主の住戸と賃貸の住戸の2棟を建てようとした。しかし、仮に家主の住戸に32坪を使うと、賃貸の住戸に使えるのは30坪。賃貸住戸の規模はせいぜい2階建て4戸程度しか見込めなかった。そこで、併設して一棟建てにし、合計6戸の賃貸住戸の確保に成功した。

 ポイントは家主の住戸の形。1~2階は敷地の約4分の1しか使わず、3階部分(約81㎡)を賃貸住戸の上にかぶせるようにした。居住空間のメインとなるリビングや寝室は3階に配置した。賃貸住戸は1~2階に各3戸。間取りは1Kと1LDKで、専有面積は23.36~33.19㎡だ。1階は長屋形式で、2階には西側に設けた共用の外階段で上がる。

 高さ制限も厳しい中、3階を設けるために、賃貸住戸は各階の階高を標準以内に抑えている。一方、2階は水回りと居室の間に床の段差を設けて、天井高を高くした。建築費は1坪あたり約100万円。賃貸住戸の家賃は9万1000~11万5000円。現在は満室だ。

(2025年 4月号掲載)
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