民泊運営代行で年商12億円 東京都内中心に500室を受託
民泊やホテルの運営を手がけるPQD(東京都渋谷区)は宿泊施設の運営代行を500室受託する。「オーナーあっての事業」という意識で、オーナーの利益を確保することに注力している。2024年3月期の売り上げは12億円で、前年同期比7億円の増収。25年3月期は15億円の売り上げを目指す。
PQD(東京都渋谷区)
加納隼人社長(36)

コロナ渦乗り越え事業拡大
PQDの加納隼人社長は16年に個人で民泊運営代行を開始し、19年に法人化した。当初は民泊施設の清掃受託を主としており、清掃から運営代行につなげてきた。現在は民泊運営代行スタッフが25人、清掃担当スタッフも含めると従業員は100人を超える。
法人化した翌年の20年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、経営危機に直面。「月間400万円の赤字を出した時もあった」と加納社長が振り返るように、経営は厳しかった。だが、コロナ下であっても、受託していたオーナーの理解を得ながら宿泊費の調整などを行ったり、途中でマンスリー賃貸へと転用したりして、しのいだ。

▲運営する民泊施設は賃貸住宅タイプが多い
競合他社が業績不振で事業を縮小していく中、20年も積極的に営業活動を行い、運営代行手数料を安く設定することで、受託件数を増やした。
「当社の利益は少なくてもいいから、一緒にこの苦しい状況を乗り越えましょうとオーナーに話して受託してきた」(加納社長)
同社が受託するのは主に東京都内と神奈川県の湘南エリアにある宿泊施設で、それらが全体の8割を占めるという。アパート・マンションタイプが多く、1施設あたり5~6室の規模だ。

▲軽井沢のような別荘地の施設も運営
運営代行費は基本20%。受託物件数によって変わることもある。
同社が運営代行をしている物件の稼働率は平均90%を超える。「宿泊料金設定についてはシステムを導入して自動化していったが、最終的には社内で手動で設定することが多い」と加納社長は話す。
同社では、社内で稼働状況を小まめにチェックするようにしている。半年前から半分以上予約が入っている場合は、料金が安いと考えて少し上げたり、逆に1カ月前でも予約があまり入っていなかったら料金を下げたりと、常に確認して調整する。またイベント会場に近い宿泊施設ではその公演日程を調べて、人気アーティストのライブが入る場合は、チケット販売後に予約がすぐに埋まることがわかっているため、少し高めの料金設定にするようにしている。
「特に韓国のアーティストは人気がありますね。こうした情報はシステムでは対応できないので、人の目で確認しながら対応しています。そうすることで、オーナーの利益を最大化できると考えています」(加納社長)
オーナーあっての事業と意識
加納社長は20代のとき、ドイツでサッカー選手として活動していた。そのときに民泊運営を経験したことが、事業を始めたきっかけとなった。ドイツでエアビーアンドビー(以下エアビー)の存在を知り、運営していたという。帰国後、日本でのエアビーの盛り上がりを知り、民泊運営代行ビジネスを始めることにした。現在はエアビーのオフィシャルパートナーになるほど、信頼度も高い。

▲ドイツでサッカー選手としてプレーしていた。その時に民泊運営に携わる
民泊運営依頼の問い合わせは、月に150件ほど入る。加えて近年は既存顧客のオーナーからの紹介も増加している。
「会社のビジョンは、日本の良さを海外に伝えること。地方活性化や街づくりの力になりたい」と熱く語る加納社長。
同社は今後の目標として年商100億円、運営代行数5000室を掲げる。加納社長のこだわりは、他社の資本を入れないことだという。株主が入ることで、オーナーの利益より自社の利益が優先されることがあるためだ。
「弊社の利益だけを追求しない。オーナーあっての事業なので、そこに真摯に向き合い、信頼される民泊運営会社に成長させたいです」(加納社長)
(2025年 5月号掲載)
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