新土地活用スタイル:第1回CBリサーチ

土地活用高齢者住宅・介護福祉施設

開所1カ月で入居率90%も可能要介護1、2の人向け高齢者住宅

CBリサーチ(東京都港区)鎮目 努代表取締役(43)

 これからの土地活用を考えた場合、高齢者向け施設や住宅は無視できない。そうした中、開所1カ月で入居申し込み90%を達成する事例がうまれている高齢者住宅がある。企画しているのは、医療・介護・福祉分野のコンサルティング会社のCBリサーチ(東京都港区)だ。鎮目努代表取締役に同社の高齢者住宅の人気の理由を聞いた。

薬局に向けて開業支援

CBリサーチでは2018年から、生き残りを懸けた薬局などの経営多角化を、高齢者住宅という新たな事業形態の提案でバックアップしている。これまで開業支援した高齢者住宅は34棟。すでに、2棟運営し、3棟目の開所準備をしている薬局もあるほど、安定した経営を実現している。中には、開所1カ月で90%超に達する高齢者住宅もある。

  同社が開業支援する高齢者住宅が順調である最大の理由は、要介護度1、2の人を対象とした住宅だからだ。「サービス付き高齢者住宅(以下、サ高住)や有料老人ホームなど要介護度3以上の人を対象とした施設は多くありますが、要介護度1、2の人を対象とした施設は対象人口に対してかなり少ないのが実情です」と同社の鎮目社長は話す。

 厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によれば、要介護の認定者数に占める要介護度1、2の割合は、13年度では49・8%だったのに対し、17年度は51・8%と増加傾向にある。一方で、要介護度4、5の割合は13年度の31・9%から17年度は29・9%と減少。

 つまり、要介護度1、2を対象としたマーケットは今後も拡大傾向といえる。実は、高齢者住宅を手がける事業者の多くは、医療や介護の保険収入ありきで収支計画を立てるため、要介護度が高くないと事業としての収益性を高めることが難しい。そのため、この要介護度1、2といった層を対象にした高齢者住宅が不足しているのだという。

▲年金収入内で暮らせる高齢者住宅が全国へ拡大している  

サ高住適用外で建築費ダウン

 そんな中で同社が他社の避ける入居者層を対象に高齢者住宅を展開できるのは、建築費を抑えているからだ。例えばサ高住では、各専用部分の床面積は原則25㎡以上と法律により定められているが、同社の高齢者住宅はサ高住の適用外のため1部屋約11㎡。当然、建築費もサ高住ほどかからない。

 「36部屋のサ高住を建設するには300坪以上の土地が必要となるケースが多いですが、高齢者住宅であれば150~200坪ほどで足ります。130坪の土地に25部屋の高齢者住宅を手がけたこともあります」(鎮目社長)

 介護福祉施設で設けられた床面積の規制を受けないので部屋数を多く作ることができ、サ高住が2部屋作れる広さに高齢者住宅なら3部屋作ることが可能だ。入居費用が1部屋月15万円のサ高住では2部屋で30万円の売り上げだが、高齢者住宅では1部屋10万円でも同面積に3部屋作るので30万円の売り上げを確保できる。
そのため、家賃・入居管理費・共益費は合計で5万9800円と食事費用を含めても10万円以下のところが多いのだ。

 コスト削減という点でいえば、要介護度が低い入居者層を対象にしたことによって、少ない介護スタッフで運営することができる点も大きい。入居者が要介護1、2の場合、介護サービスの内容は掃除や洗濯、着替えの手伝いなどが中心で、1回のサービス提供時間も10〜15分程度と短い。低コストと効率的な運営により、入居率60%前後でも黒字になる同社の高齢者住宅は、入居者、土地オーナー、運営者の“三方よし”を実現する。

 要介護度1、2の人が年金で暮らせてケアも受けられる住宅は、以前より医療機関やケアマネジャー、遠方に住む家族など多くの人からそのニーズの高さを指摘されていた。現在は年間20棟ペースで計画が進んでいる。「今後、より一層ニーズが高くなる高齢者住宅の情報や企画を、長期的な土地活用を模索している土地オーナーに向けて提供・提案していきたいと思っています」(鎮目社長)

順調に棟数は増え、2025年8月までに50棟を計画する

(出所)CBリサーチの資料を基に地主と家主で作成

(2024年5月号掲載)

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