土地相続における税金対策や注意点

相続相続税対策

土地を所有している地主が亡くなったとき、土地の相続にあたって、家族間の話し合いや、必要な書類、登記などが必要になります。

相続税の申告は被相続人が亡くなってから10か月以内に行う必要があります。そのため、亡くなってからでは家族間で相談したり手続きをしたりの時間が足りなくて適切な対応ができなくなる可能性があります。

土地の相続について事前に準備しておくためのポイントを「家主と地主編集部」が解説します。

相続税の申告は10か月以内

相続税の申告は、被相続人が死亡した相続発生日から、10か月以内に行う必要があります。

相続税を申告するまでには以下のことをやっておく必要があります。

  • 売却する土地の取捨選択
  • 必要な書類をそろえる
  • 土地を正しく測量する

納税には現金納付・延納・物納がある

 納税は、現金納付が大原則です。しかし現金を準備できるとは限らないため以下3つの選択肢があります。

  • 現金納付
  • 延納
  • 物納

現金納付

 相続税は、原則的に現金一括納付になります。

 

延納

 現金納付が困難な場合は、分割で払う延納があります。

 延納期間は相続財産のうちの不動産の割合にもよりますが最長20年です。不動産が相続財産に含まれた場合は、換金できる財産を持つとされ延納の利子税が高くなるものの、手元に多くの現金がない場合に土地を売らずに納税できるやり方になります。

代々の地主で都市部に土地を持っている場合、一度手放すと二度と手に入れられないような好立地の土地であることも多いでしょう。

 そのため現金が用意できない場合は、銀行から相続税の納税資金を借り入れる方法もあります。

 現在は金利が低いので納税資金を全額借入して現金納付を行い、確保した土地を生かした賃貸経営を行いながら借入金を返していくケースが見られます。

物納

 物納とは、その名のとおり現金ではなく土地や建物そのものを税として納めることです。

 しかし、納税の大原則は現金納付であるため、サラリーマンなどは物納が認められません。相続税の支払いが困難であるため物納という要件を満たすために、物納したい不動産は学生などの現金納付ができない者に相続させましょう。

 例えば、貸し宅地を行っている場合は物納のニーズが高いと言えます。

 借地人に低額の賃料で長期にわたって貸し出しているケースでは、固定資産税分だけでも収益が得られれば問題がなかったものの、相続が発生した途端、課税されて相続人が困ることになります。

 もし借地人に土地を購入できるだけの財産があれば売却し、そうでなければ物納を検討する相続人もいるでしょう。

売却する土地の取捨選択

 相続税を支払うとき、充分な現金が準備できるとは限りません。地主は、「土地はあるが現金がない」ので納税できないということがよく起こりえます。

 特に都市部に土地を持っている場合、路線価での評価が高いために相続税評価も高くなりますが、税金を払うために売却できる資産がないことがあります。

 相続発生時に慌ててしまい、結果的に手放すべきではない土地を売ってしまうこともあります。事前に土地の取捨選択を行う必要があります。

  • 残す土地:先祖から受け継ぐメインの土地(自宅など)、収益性が高い土地(高稼働の賃貸物件など)
  • 売却を検討する土地:収益性の低い土地(資産活用をしにくい立地など)、貸し宅地や駐車場

 収益性の高い不動産は高額で売れるために優先的に売却したいと考えてしまいますが、相続人の生活維持を考えると高収益の不動産は手元に残しておいた方が良いでしょう。

 また相続税評価額が時価よりも高い土地を事前に売却したほうが相続税の節税につながります。

 例えば相続税評価額1億円の土地を生前に5千万円で売った場合、相続税の負担を抑えることができます。生前であれば節税対策のための土地選択もできますが、相続発生後に複合的な視点を持って処理するのは困難です。

 また、残す土地を選ぶ際、先祖から受け継いだ土地を守る気持ちを優先しすぎてしまい、相続のたびに生活レベルを下げていくケースも見られます。子孫が将来的に安定した生活を送ることを重視して選択する視点が大切です。

登記・書類

 登記簿謄本は土地ごとに作成されます。今まで相続による登記の変更が義務化されていなかったため、名義が書き換わっていない土地は数多く存在します。

登記簿謄本の名義変更を確認する

 2024年4月から、相続登記が義務化されます。しかし今までは土地ごとの登記簿謄本が義務化されていなかったため、名義が書き換わっていない土地は多く存在し以下2つのパターンがあります。

  • 祖父から父の代への相続時に遺産分割が決まっていて単に名義の変更だけ行われていなかった場合
  • 祖父から父の代への相続時に遺産分割が決まっておらず登記もそのままの宙ぶらりんになっている場合

単に名義変更だけが行われていない場合は、相続登記を行うだけです。

 しかし遺産分割が決まっていなかった場合、父親の兄弟が亡くなっている場合もあります。また、権利が孫に移っている場合でも、代を重ねることで関係性が薄くなっていることもあるでしょう。戸籍の付票を取って現在の住所を調べたり、手紙を送ったりという作業に手間が掛かってしまいます。

土地をすべて把握する

1960年~80年代に、将来的に開発されて地価が上昇すると宣伝された北海道などの山林を区分して販売した原野農法。

その後開発は行われず価値も著しく低いため固定資産税が発生しませんでした。そのため被相続人が土地を所有していることを知ることが難しかったのです。

土地の課税標準額が30万円未満の場合、固定資産税は掛かりませんが、相続税の課税対象にはなります。こういった場合は、申告期限を過ぎて罰則が科されることを防ぐ必要があります。なお、相続登記漏れは10万円以下の罰金が科せられます。

壌渡所得税を計算する

譲渡所得税とは、土地の購入価格より売却価格が高かった場合に掛かる税金です。土地契約書に買値が7,000万円と書かれていて1億円で売却した場合は、3,000万円の利益になります。この3,000万円に譲渡所得税がかかります。

契約書がない場合は買値が分かりません。その場合は、売った価格の5%が取得費として計算されます。そのため1億円で売却した場は9,500万円が利益として計算されます。

先祖代々受け継がれてきた土地で、売買契約書が残っているケースはほぼゼロでしょう。譲渡所得税も考慮に入れて売るべき土地なのか検討する必要があります。

土地の評価額を確認

評価額を確認

相続人が複数いる場合、意見の食い違いが起こる場合があります。

相続税の計算は、建物ベースか、路線価ベースで行うかで価格に差がでます。土地の評価で折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に調停を依頼するケースもあり得ます。

そのため相続前に、建物ベースか路線価ベースかを決め、具体的な数値を共通認識として持っておく必要があります。

相続税の減額を視野に入れた対策

駐車場を所有している場合、貸し方で土地評価が変わることがあります。

例えば、駐車場が500㎡以上あったため、地積規模の大きな宅地の評価として6~8割の評価額を想定していました。しかし駐車場の半分をスーパーへ、残り半分を個人へ貸し出していたため、2つの土地という評価額になり、予想していた評価減は受けられなくなりました。

一方で、一つの土地を二つに分けることで評価減になることもありえます。以下2つのケースです。

  • 角地
  • 二法路線地

角地とは、区画にある2辺以上が道路に面している土地のことです。角地には側方路線影響加算率が土地全体に掛かり、所定の加算率で計算した価格が土地の評価額に加算され税金が高くなります。そのため、2つに分けることで、片方にのみ側方路線影響加算率を適用させることができます。

二法路線地はとは、土地の正面と裏を道路に挟まれている土地のことで、利便性の高さを評価額に反映させる二法路線影響加算率が適用されます。道路に水平に2分割することで、正面路線にのみ接する土地になり評価額を低くすることができます。被相続人であれば本人1人の手続きで可能ですが、相続発生後には、相続人全員の同意が必要になります。

境界線があいまい

境界線に関しては、隣近所となぁなぁでやり過ごせていることもあります。しかし、相続が発生するとその状況を放置できません。過去に一度も測量が行われていなかったような場合は、隣家とトラブルが起きたり、やり取りが発生したりします。そのため、早めに法律に乗っとった測量を行っておく必要があります。

遺言書の作成

現在の民法では、すべての相続人に法定相続分が定められています。配偶者があれば遺産の1/2を、子供たちは残りの1/2を兄弟姉妹の人数分で均等に分割します。

遺言を残す場合、遺言書の内容は、法定相続分や相続人同士で遺産の分け前を話し合う遺産分割協議に優先します。被相続人は、遺言書を残し、その内容について元気なうちに相続人に明らかにしておくことも大切です。

 

一覧に戻る