49戸の一斉退去で目覚めた物件づくり
コンセプト設定と住み心地に力を注ぐ
成田貴子オーナー(愛知県蟹江町)

17年前、専業家主の義父を手伝う形で賃貸経営の世界に入った成田貴子オーナー(愛知県蟹江町)。現在は15棟100戸を管理している。義父は長年1人で自主管理していた。当時は築20~30年の1DKや2DKの物件が多く、近所の築浅物件に押されながらも、外国人就労者の入居を受け入れて、満室経営していた。
成田オーナーが引き継ぎ、順調に経営していたが、2008年9月のリーマン・ショックの影響で、空室が49戸も出る事態となった。「家賃を下げても、49戸は埋まらないと思いました。選ばれる物件に変えなければならない」と成田オーナーは思ったという。
旧住宅金融公庫から1000万円の融資を受け、49戸のうち20戸を改修。水回りなどの設備を新しくし、壁紙にアクセントクロスをあしらうなど、内装にもこだわった。さらにホームステージングを自身で行い、内見者が引っ越し後の暮らしを想像しやすいようにした。
「工事を繁忙期前の12月中に終わらせたため、09年4月までに空室は10戸に減りました。その後も空室の改修を続けて、09年中に満室にすることができました」(成田オーナー)
ガレージハウスや猫共生型 選ばれる物件をつくる
コンセプト型賃貸住宅をつくり始めたのは16年。新築した「BGファミリア」は、木造3階建てのガレージハウスだ。車とバイクが好きな夫のアイデアをヒントに、近隣に競合物件がないことから着手。全2戸のメゾネットタイプで、1階がシャッター付きガレージ、2~3階が居住スペースだ。メゾネット型にすることで、上階の入居者の騒音を気にすることなく、戸建て賃貸住宅のように住むことができる。さらに、分譲仕様のシステムキッチンを備え付け、クローゼットなどの収納スペースも確保した。
「地方では1年間空室ということはよくあります。だから、選ばれる物件になるための要素が必要です」(成田オーナー)。家賃は周辺では高めの12万円だが、入居待ちが出る人気物件となった。

▲猫向けに工夫されたLeCatの室内。家賃は7万1000円からと、周辺の同規模の部屋より約1万円高いが、満室経営中
18年に新築したのが、猫共生型アパート「LeCat(リキャット)」。ロフト付きの1LDKで、入居者が留守にしていても猫が退屈しないよう、キャットタワーやキャットウオークで室内を周遊できるようにし、ロフトには室内を眺められる小窓を設けた。また、玄関から室内に入るドアはすりガラス入りで、ドアを開ける前に猫の存在を確認できる。こうした工夫はすべて成田オーナーが考えた。

▲LeCatの入居中の部屋。2棟目が24年中に竣工予定だ
「間取りを考えるのが好きで、間取りプランナーの資格も取得しました。義父から引き継いだ家業を守ることを第一に、入居者が気持ちよく住める部屋をつくるよう心がけています」(成田オーナー)
(2024年1月号掲載)
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