【電子版連載】次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー:第3回(2)

賃貸経営リフォーム・リノベーション

「公共物件・ランドマーク物件のリノベーション」から「まちを動かすリノベーションの社会的意義と効果」を考える

【電子版連載】次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー:第3回(1)に続き、村田明彦氏 (熊本県玉名市)の講演をレポートする。

村田明彦氏 (熊本県玉名市)

[プロフィール] 1968年、熊本県玉名市生まれ。明治大学工学部建築学科卒業後、建設会社に入社。2003年に村田建築設計所(玉名市)を設立し、15年に法人化。

 

まちの活性化のためには、プロセスに参加してもらうことが重要

 関わる人々がその行為を自分ごととして捉えてプロセスに参加することが、街の活性化においては非常に重要な要素であると感じました。皆の思いが乗った取り組みでないと、成功に導くのは難しいと実感しています。
 こうした経験を自分の設計の仕事に生かした例の一つが、鉄筋コンクリート造5階建てで元は整形外科だった建物をリノベした「HIKE(ハイク)」です。カフェやセレクトショップを併設するホステルで、カフェ好きの女性に人気があるほか、ポップアップイベントも頻繁に開催されており、九州中から人々が集まる玉名市のランドマーク的な存在です。

 HIKEのオーナーご夫妻は元々高瀬エリアに住んでいたわけではなく、別の地域から同地に移住してきました。そのため彼らは、まず地域住民に自分たちのことを理解してもらうために、地域の人々を集めて説明する場を設けました。さらに、𠮷原オーナーをはじめとするDIYのプロフェッショナルな人たちにも集まってもらい、大規模なリノベについて意見を聞きました。

▲リノベ前には地域の人たちに向けて説明会を実施

 実際の工事では、解体作業やDIYを通じて地域の人々と協力できるようにSNSでの呼びかけを実施。例えば、カフェで使うベンチを作ったり、壁紙を剥がしたり、スプーンを作ったりするワークショップを5回ほど行いました。

▲ワークショップを通じて自然に場を共有することができた

 工事中に地域の人たちの意見を取り入れ、手を動かしてもらうことで、地域に愛される施設を造り上げることができたと思います。またワークショップを通じてオーナーの思いを共有する場が生まれ、それが建物完成後も続きました。ワークショップでベンチを作った人たちは、その後も自分が手がけたものを見に来たり、友達に紹介したりするようになり、自然とお店のファンが広がっていったのです。
 一連のプロセスにより、建物が完成する前から店のファンを増やし、地域全体に広がるような波及効果を生み出せたことが、このプロジェクトの成功要因の一つだと感じています。

「自分ごと化」と「見える化」がまちの活性化のカギ

 こうした活動をしている中で、玉名市からJR鹿児島本線玉名駅の待合室を高校生たちと一緒に居心地の良い空間にしたいという依頼がありました。そこで、21年に2回のワークショップを行い、待合室を少し改装するプロジェクトを実施しました。
 このプロジェクトで大事にしたのは、高校生たちが自分でどうするか考える、つまり自分ごと化すること、そして、作業を駅のホームという「見える場所」で行い、地域との時間と場所の共有を図ることでした。こうした取り組みがまち全体に広がり、活性化につながる要因になるのではないかと考えています。

▲駅の待合室を高校生たちが居心地の良い空間に改装

(2024年10月公開)
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