【電子版連載】次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー:第3回(3)

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「公共物件・ランドマーク物件のリノベーション」から「まちを動かすリノベーションの社会的意義と効果」を考える

 相次ぐ自然災害や資材価格の高騰などの影響により、大きな変化が起こりつつある不動産業界。そうした中「不動産オーナー井戸端ミーティング」は貸し手と借り手、そして地域にとって「三方よし」となる、持続的でブランディングされた不動産経営を目指し、主宰する𠮷原勝己オーナー(福岡市)が中心となり勉強会を有志で開催している。
 今回は「公共物件・ランドマーク物件のリノベーション」について、2023年12月9日に熊本県津奈木町で実施された、村田明彦氏 (熊本県玉名市)と川畠康文氏 (鹿児島県鹿屋市)の講演をレポートするその3回目。

川畠康文氏 (鹿児島県鹿屋市)

[プロフィール] 「幸福度の高い暮らし」をつくり、未来の子どもたちへつないでいくことを目指す。住環境をトータルに手がけながら「心地よい暮らし」をデザイン。そして、地域づくり、廃校活用による宿泊施設の運営も行う。

 

まちの活性化の延長線上で、廃校活用プロジェクトを立ち上げる

 鹿児島県の大隅半島にある鹿屋市では、約10万人の人口が少しずつ減少しています。私はその鹿屋市で、本業である建築設計の傍ら、さまざまなイベントを通じて地域のまちづくりにも関わっています。例えば、商店街と空き店舗を利用してマーケットを開催したり、遊休不動産の活用により都市再生手法を学ぶリノベスクールを開催したりしています。さらに、中心市街地について考える「街のにぎわいづくり協議会」に参加するなどの活動を通じて、まち中の空気感や期待値を高めることを大切にしています。その結果、新しいホテルが三つ建つなど、少しずつですがまちの活性化につながっており、まち全体が良い方向に進んでいると感じています。

▲さまざまなまちの活性化につながる活動に参加

 まちを活性化するための活動の延長線上で取り組んでいるのが「ユクサおおすみ海の学校」という廃校活用プロジェクトです。ユクサおおすみ海の学校は体験型の宿泊施設として運営しています。建物は鹿屋市から賃貸契約で借り、リノベ費用や運営費用はすべて自分たちで負担しています。
 この施設は、元々「日本一海に近い小学校」と言われていたものの、約10年前に廃校となった鹿屋市立菅原小学校です。市の所有物でしたが、公募によって私たちが事業者として選ばれました。同市内でさまざまなイベントを手がけていた大隅家守舎(鹿児島県鹿屋市)の役員と、リノベを広めたブルースタジオ(東京都中央区)の役員と共に新しく「Katasudde(カタスッデ:鹿児島県鹿屋市)」という会社を設立。私がこのプロジェクトの代表を務めています。
 同プロジェクトのコンセプトは「子どもたちのために、かつて子どもだった大人たちのために」。廃校となった学校を訪れる人々が、子どもの頃に戻ったような気分を味わえる場所にしたいという思いで始めました。また大隅半島全体を盛り上げるため、「大隅半島の人と自然が先生です」というテーマを掲げ、この場所を拠点として大隅の魅力を味わってもらうことも目指しています。

▲大自然の中にあるユクサおおすみ海の学校

民間から資金を集めて開業

 このプロジェクトは、廃校活用として少し珍しい点が二つあります。一つ目は、この建物の大家さんが鹿屋市であること。外壁の修繕や浄化槽の入れ替えなどは市に依頼しましたが、それでも予算が足りず、屋上の防水工事などは対応してもらえませんでした。そのため、雨漏りがあるときには自分たちで対応しています。また、鹿児島県も遊歩道の整備に協力してくれました。
 もう一つは費用についてです。銀行からの借り入れや私たちの出資金、政府系の金融機関からの出資、さらに一部はクラウドファンディングで賄うなど、何とか資金をかき集めてこのプロジェクトを進めています。
 ユクサおおすみ海の学校が目指しているのは、ツーリズムの拠点として日常の価値に目を向けた観光を楽しめる場所。具体的には、地元での食事や楽しむこと、そして滝や海といった自然環境を体験できるような滞在型観光を推進する拠点にしていきたいと思っています。
 施設自体は団体向けの宿泊施設として設計されていることから大部屋が多く、スポーツ合宿や企業研修、修学旅行など団体旅行が主なターゲットです。

▲自然の中でいろいろな体験ができる滞在型観光を提供

(2024年11月公開)
(4)へ続く
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