Part2 外壁 表面だけでなく下地も確認
外壁改修では、主にタイルと塗装、サイディングが使用され、それぞれに特徴や劣化の目印がある。一方で、RC造の場合は外壁材の種類だけでなく、下地となるコンクリート部分の劣化にも注意したい。
専門家のアドバイス:工事監理を第三者に依頼するのも方法の一つ
一般社団法人マンション計画修繕施工協会(東京都港区)
中野谷昌司専務理事(61)
修繕工事が始まって以降、施工会社から進しん捗ちょく報告や仕様の変更などの相談があった場合、その内容が専門的だと一般の家主にはわかりづらいものだ。それを避けるためにも、「第三者の設計事務所に、工事の内容をチェックする工事監理業務を依頼するのも一つの方法です」と中野谷専務理事は語る。週に1度、2週間に1度といった具合に、現場をチェックしてもらうのだ。費用は1日あたり数万円から10万円程度だという。最近はウェブツールを使った遠隔の監理も可能になっている。
また中野谷専務理事は、「RC造の一連の外壁修繕のポイントは、小規模のオフィスビルや商業ビルにも当てはまります」と語る。
塗装の耐用年数は10~15年 タイルは長くて40年
▲コンクリートのひび割れ(写真提供/マンション計画修繕施工協会)
初めに、主に使用される外壁材の特徴を順に押さえていこう。
タイルの場合、張り替え時期の目安である期待耐用年数は、一般的には30年や40年といわれている。建物の保護機能でいうと、塗装より優れている。1㎡あたりの張り替えの場合の工事費は、タイルの種類により8000円程度から、高いものだと2万円程度のものもある。
塗装は、使われる上塗り塗料によって主に4種類に分かれる。グレードが高い順にフッ素、シリコン、ウレタン、アクリルだ。中塗り材を入れた複層仕上げ塗材で1㎡あたりの工事費は、それぞれおおよそフッ素だと2000円、シリコンは1600~1700円、ウレタンは1500円、アクリルだと1200~1300円程度。塗り替え時期の目安である期待耐用年数は10~15年だ。
▲タイルの浮き(写真提供/マンション計画修繕施工協会)
サイディングは、壁にサイディング板を張り付けるもので、住宅では多くで窯業系と呼ばれるものが採用されており、耐火性や耐熱性、耐水性に優れる。長持ち度は10〜15年で10年を目安にメンテナンスが必要になる。
鉄筋露出減少などコンクリート劣化に注意
年数がたつと、劣化の目印として次のことがよくいわれる。タイルでは表面の汚れやひび割れ、また、タイルの接着面が部分的に剥がれる「浮き」など。塗装では、塗膜の膨らみや剥離のほか、触ると手に白い粉が付くチョーキング現象などだ。サイディングも、塗装と同様のチョーキング現象やサイディング板自体のひび割れが起こる。メンテナンスの時期は、環境によって異なるが、10~20年周期が目安だ。
これらに加えて、特にRC造において、一般社団法人マンション計画修繕施工協会(東京都港区)の中野谷昌司専務理事は、外壁材だけでなく下地となるコンクリート部分の劣化にも注意を払うように指摘する。主な症状は、コンクリートが乾燥収縮する際に生じるひび割れ。次いで、鉄筋露出現象や爆裂と呼ばれるものがある。中の鉄筋がさびて膨張し、外側のコンクリートを押し出して欠落させるものだ。このほか、築古のRC造だと、コンクリートの上に塗られたモルタル層に浮きや欠落が起こることもある。また、ベランダや廊下に設置された手すりの根元部分に欠落が見られることがある。
完成から10年をめどに専門家の診断を推奨
中野谷専務理事は、建物完成から10年をめどに、専門家による診断を勧める。「10年程度が経過すると、乾燥収縮によるコンクリートのひび割れの症状が出尽くします。その段階で直さないと、例えば、ひび割れ箇所を通じて空気中の炭酸ガスが内部に染み込み、鉄筋をさびさせてしまいます。その結果、鉄筋の膨張、コンクリートの押し出しにつながるのです」(中野谷専務理事)
診断の結果、手当てが必要ということになれば、外部からの悪因を引き込んでしまうひび割れをいかに早く修繕するかが重要になると中野谷専務理事は指摘する。「そこできちんと修繕できれば、2回目の修繕までは20年ほど空けてもいいくらいではないでしょうか」(中野谷専務理事)
診断調査・修繕設計と施工の分離が望ましい
修繕を実施する際、工事の見積もりを施工会社から直接取ろうとする家主も多いだろうが、中野谷専務理事は「建物の診断調査および修繕設計をする設計事務所などの事業者と、施工会社を別々に選ぶことも一つの方法です」と語る。
信頼できる施工会社との付き合いがあればいいが、どこに依頼していいかわからない場合は、施工会社に見積もり依頼をする際、事前に設計事務所に修繕設計を作成してもらい、工事項目と仕様を施工会社に提示し、施工会社から金額のみを出してもらうという方法だ。複数の施工会社に同様のやり方をすれば、同じ土俵の比較なので見積もり内容の比較が容易になる。
このほか、工事が始まってから注意したいのが、昨今の建築資材の高騰だ。半年の間でも価格が大きく変わることがあるという。中野谷専務理事は「工事代金の変更など、受注者から協議の申し出があった場合、発注者は協議に応じるよう国からも通知されています。家主は発注者の責務として、このことも知っておきましょう」と語る。
(2024年8月号掲載) 次の記事↓ 【特集】古くなったら避けられない 大規模修繕の基礎知識③
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