【連載】店舗のプロが解決! 店舗不動産オーナーの困りごと:1月号掲載

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無用なトラブルを回避するためには入居審査が重要! 入居審査のポイント

店舗不動産において、入居の申し込みがあった際、オーナーは入居審査を行います。入居前の段階でしっかりと審査しておかないと、後々テナントとのトラブルにつながりかねません。今回は、テナントとの無用なトラブルを防ぎ、安定した店舗不動産の運営を行うために、入居審査を行うときのポイントを解説します。

業態や保証状況が審査対象 「長期経営」の判断材料に

 テナントが入居するまでの流れとしては、入居希望者は不動産会社から物件を紹介してもらい、希望する条件の物件があった場合、内見、申し込み、審査を経たうえで契約に進みます。その後、店舗の内装工事を行い、工事完了後、諸官庁検査および営業に必要な届け出を行い、店舗として開業します。

 全工程の中で最も気を付けたい事項として、契約前の審査が挙げられます。なぜなら、店舗不動産の場合、「店舗を長く営業できるかどうか」の判断をしなければならないからです。そのために、業態資料の提出や営業時間の確認、決算書、それに付随する保証会社の加入状況などにも目を通す必要があります。審査は、具体的には「信用調査会社の審査」と「オーナーの審査」の二つに分けられ、おのおの審査するポイントが異なります。

審査依頼は信用調査会社へ 既存テナントと情報共有も

 まず、信用調査会社が、入居者の犯罪歴や与信関連の書面審査を行います。犯罪歴の有無や反社会的勢力に属していないかの確認に加えて、決算書や法人登記簿謄本を基に、与信の確認から支払い能力を審査します。

 ここで重要なのは、信用調査会社に依頼するということです。不動産会社によっては、審査を一切行わずにオーナーの審査へ進めてしまう事業者も存在します。書類審査が十分に行われずに、反社会的勢力を入居させてしまった場合、トラブルに発展しやすいことは確かです。トラブルを事前に防ぐためにも、信用調査会社による審査は必ず行いましょう。

 信用調査会社の審査を通過すると、オーナーの審査に進みます。オーナーの審査でチェックするポイントは、主に事業内容や業態の詳細、営業時間や想定する来店客数など、店舗運営に関することがメインとなります。例えば、エレベーターがある店舗不動産では、混雑を防ぐため、ほかのテナントと合わせた想定来店客数を把握します。

 事前にこれらを確認しておくことで、既存テナントとのトラブルを回避でき、来店する客の利便性も向上します。

 また、入居希望テナントがどのような業態かを、あらかじめ既存テナントへ説明し、理解を得ることも安定した店舗不動産の運営には効果的といえます。なぜなら、すでに美容室が入居しているにもかかわらず、新たにヘアカラー専門店などの同じ業態が入居し、既存テナントに不利益が生じた場合、トラブルに発展する可能性があるからです。

 最悪の場合、既存テナントが退去してしまう事態も考えられるので、既存テナントの意見も入居審査における判断要素と捉えて、トラブル回避に努めましょう。

サブリースも選択肢の一つ 管理業務の負担を軽減

 以上のように、オーナーが独力でテナント入居までの全工程を行うのは、大きな負担がかかります。負担を大幅に軽減する方法として、サブリースという選択肢があります。

 サブリースとは、サブリース会社がオーナーから建物を一括もしくは区分で借り上げ、賃貸経営をすべて引き受けるという方法です。この際、サブリース会社が貸主となるため、一通りの管理業務はサブリース会社が請け負うことになります。

 サブリースのメリットは、面倒な管理業務を専門の知識を持ったサブリース会社に任せることができるという点です。入居前の与信審査をはじめ、督促業務やトラブルへの対応を行います。そのほか、退店するテナントが発生した場合でも、サブリース会社が物件を借り続けるため、賃料収入が減ることなく運営できます。また、サブリース会社の中には、本来オーナーが確認するべき事項である、貸室内の内装が建築基準法や関連法規に適合しているかの調査や是正を行う会社もあります。

 多くのサブリース会社では、テナントの契約が満了になり更新手続きを行う際、再度与信の審査を行います。決算書や法人登記簿謄本の確認を通して、代表者や連帯保証人に変更はないかなど細部まで確認するため、契約更新時も安心です。

 テナント入居に伴う審査や煩雑な業務を効率化した店舗不動産の運営を考えている人は、サブリースを検討してみてはいかがでしょうか。


TRNグループ
TRNシティパートナーズ 金子貴是取締役

2006年、店舗流通ネット入社。飲食店の出退店のサポートを行う店舗リース事業に従事。14年、名古屋へ赴任。名古屋支店長、西日本事業部部長、執行役員などを歴任。20年、東京本社へ帰任。ファンドを出口戦略として不動産の取得から開発、建物管理までを行う店舗不動産ファンド事業部長に就任。22年4月、不動産事業の新設分割によるTRNシティパートナーズ設立に伴い、取締役都市開発

(2024年1月号掲載)

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