【特集】入居者動向と人気設備から見る 2024年の賃貸住宅①

賃貸経営トレンド

3年ほど続いた新型コロナウイルス下での生活。2023年3月13日からマスクの着用は個人の判断に委ねられ、5月8日にはコロナの感染症法上の位置付けが5類に移行。以前の生活様式が戻ってきた。とはいえ、円安による物価高、インバウンド(訪日外国人)の回復など社会情勢は大きく変化。23年、賃貸住宅マーケットはどのように動いたのか。24年の予測動向と併せてリポートする。

属性別に見る
部屋探しにおけるニーズの変化

一般入居者、法人、学生、外国人という四つの属性別に、23年の動向と24年の予測を取材した。

一般入居者

内見物件数は3件弱に絞られる
内見してもらうための対策が重要

 「この3年はコロナを踏まえた部屋探しでした。現在は従来の生活パターンに戻りつつありますが、コロナを経て変わったことは、内見物件数の減少です」

 そう話すのは、リクルート(東京都千代田区)の池本洋一 SUUMO(スーモ)編集長だ。同社は23年9月に「2022年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」を発表。22年度に賃貸住宅へ入居した人の動向を調査した内容で、池本編集長が注目した結果の一つ目が、内見物件数(図1)だ。

 「内見した物件の数は、17年度に3件を切ってから下回ったまま。一人暮らしの人だと22年度は2.5件です。部屋探しをする際、借りたい物件を3件以内に絞っているということがいえます。コロナ下の外出制限の影響もあり、服や食べ物なども、スマホで調べ尽くしてから購入する消費スタイルになりましたよね」(池本編集長)

 そこで家主が意識すべきことは、「空室を埋めるため、まずは内見物件に選ばれる必要があり、3件の中にいかに入るかです」と池本編集長は話す。具体的には、ポータルサイトに無数に掲載されている物件の中から選ばれるために、掲載タイトルと写真を工夫することだという。

 「競合物件と何が違うのか、強みがきちんと明文化されていることが大切です。物件の写真も、明るい日中に撮っていて部屋の広さが適切に伝わっているか。仲介会社が作成した文章や写真をしっかりチェックして、差別化できるコピー、写真を掲載できるかが内見に選ばれるカギでしょう」(池本編集長)

2023年のトレンド
1.内見物件数が、平均3件を切る
2.設備ニーズでピッキングされにくいカギが初の1位
3.ペットを飼いたい人は、飼っている人の2倍以上

 

防犯設備の不足が入居者の不満となる時代

 次に池本編集長が注目したのは、設備に対する満足度だ。ディンプルキーなどのピッキングされにくい鍵」が、22年度で初の1位となった。

 「スマートロックや非接触キーと違って、ディンプルキー自体は20年前からあるものです。コロナ下を経てニーズが高まったということは、在宅時間が増えて防犯意識が高まっているということではないでしょうか」と池本編集長は話す。さらに「つまり、引っ越す要因になるわけです。オーナーは空室対策としてだけでなく、退去抑制としても既存入居者の部屋の鍵をディンプルキーに交換するなど対応しておきたいですね」(池本編集長)

ニーズが高まるも少ないペット飼育OK物件

 最後に注目した調査結果は、コロナ下をきっかけにペットを飼いたい人のニーズが高まっていることだ(図2)。「現在ペットを飼っている人は18.2%ですが、今後飼いたい人は44.5%に上ることがわかりました。2倍以上のニーズがあると考えられます」(池本編集長)

 また、飼いたい人の属性を見ると、ファミリー、リモートワーク実施者で、家賃が高い物件に住む人ほどニーズが高い結果となっている。しかし、賃貸物件でペットの飼育が可能な物件は2割もないという(*『SUUMO賃貸』掲載物件データより算出)。

 「ペットが飼育可能な物件は空室率が低いほか、「SUUMO」に掲載時の問い合わせ率も高いです。ペット可だったら、駅から遠くても、築年数が古くても良しする人がいるでしょうから、空室に悩むオーナーにとって、所有物件活用の大きなヒントになるのではないでしょうか」(池本編集長)

池本編集長’s VOICE
「省エネ」と「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」などの性能を表示した物件への問い合わせ率を調べました。19年度と22年度を比べると、省エネ・ZEH表示がある物件は、ない物件より1.5~1.8倍高く、省エネへの意識の高まりを確認できました。

(2024年1月号掲載)

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