My賃貸経営スタイル:設備投資&入居者対応の対応で家賃アップ

賃貸経営入居者との関係づくり

設備投資と入居者対応の充実 退去を防ぎ家賃アップにつなげる

馬場知弘オーナー(31)(東京都小金井市)

 馬場知弘オーナー(東京都小金井市)が祖父の建てた物件の賃貸経営に携わるようになったのは、2020年のこと。当時、築22年29戸の「ミレニアム成和」では一気に4戸が退去する事態が発生した。更新の時期でもないのになぜだろうと物件を確認すると、ひどく荒れたごみ置き場が目に入った。慌てて有料でごみの引き取りを依頼し、清掃を行った。祖父の代より物件の管理は管理会社に任せていたが、家主もしっかり関わっていくべきだと痛感した。

 家賃収入や入居者の動向を見ていくと、家主への相談なく家賃の引き下げが行われていたこと、また女性の入居者数が減少していることなどがわかった。そこで、築古でも競争力のある物件づくりを目指して、設備投資を行うことにした。

 まず導入したのは、テレビモニター付きインターホン。調べてみると、周辺にある同じような築年数の競合物件で導入している物件は皆無だった。同設備の採用が奏功し、女性や学生の入居者が増えた。「特に学生は、親の安心感が入居につながったと考えています」と馬場オーナーは話す。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大により広まった在宅ワークに対応するために、無料インターネットの容量を1GB(ギガバイト)に上げた。さらに、全戸にスマートロックを採用。これは、退去後の鍵交換費用のコストカットにもつながると見込んで導入を決めた。

LINEやクレジットカード導入 入居者の満足度を上げていく

▲エントランスには屋上菜園で採れた野菜のお裾分けコーナーもある 

 取り組みは設備投資だけではない。かつて、管理会社に任せきりだった時代は、騒音問題や共用部へのクレームが家主に報告もなく、解決されないまま放置されていた。それが退去につながっていたことを鑑み、希望する入居者と管理会社、そして家主の「LINE」グループを各戸ごとに作成した。LINEであれば、日常生活のささいな困りごとでも共有しやすく、家主側も迅速に対応が可能だ。

 家賃の支払いもクレジットカード決済に変更した。カードで支払うことでポイントがたまる。「この物件を退去するのはもったいない」というイメージを入居者に与えられると考えた。

 目に見えて改善が図られた設備面、そして迅速なクレーム対応というハード・ソフト両面のバリューアップを経て、共益費を3000円値上げ。また家賃も、入居年数や設備に応じて2000~1万円程度の値上げを実現した。値上げに関しては、家主側からきちんと説明をした。「元々が安すぎたと思っています」と入居者にも納得して入居を続けてもらうことができた。

 現在では、屋上菜園も設置。収穫した野菜を入居者と共に楽しむバーベキューなど、入居者イベントにも力を入れている。「イベントに参加したことで退去を考え直したという、うれしい声も聞きます」と話す馬場オーナー。今後も入居者の満足度を向上させるための施策を打ち出していきたいと考えている。

(2024年1月号掲載)

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