企業トップ潮流を読む:事業用不動産への組み換え

賃貸経営不動産投資

事業用不動産への組み換えは安全収益への一歩

アズ企画設計(東京都千代田区)は、収益用不動産を取得し、バリューアップ後に販売する不動産販売事業や、賃貸住宅の管理を手がける上場企業だ。近年は住宅に加えて、オフィスビルや商業ビルの買い取り再販に注力する。同社の松本俊人社長に、収益不動産市場の現状と不動産オーナーの資産運用のポイントを聞いた。

郊外は倉庫・物流施設が安定

――収益不動産市場の今後についてどうみていますか。

 郊外の賃貸住宅はますます厳しくなってくるでしょう。人口減少を加味して、できるだけ競争力のある物件にシフトすべきです。都心の駅近くの賃貸住宅は、利回りが郊外に比べて低くなる点がネックとなりますが、その分空室や将来の出口の心配は少ないというメリットがあります。土地代が高いため、節税効果も高いです。

――郊外の賃貸住宅は厳しくなってきています。

 郊外は住居系よりも店舗や倉庫にニーズがあることに気付きました。最近も埼玉県川口市にある200坪ほどの広さの空き倉庫が1.5億円で売りに出されていたのですが、6件の買い付けが入りました。買い付けを入れたのはすべて中国人です。越境EC(電子商取引)が発展する中で、倉庫の需要は拡大しています。そのほかにも、400~500坪の賃貸中の倉庫2件を関西と九州の資産家がそれぞれ2.5億円くらいで買いました。購入目的を聞くと、そのまま貸してもいいし、自己使用してもいいし、さらに解体して分譲用地でもいいとのこと。利回りは5~6%くらいですが、倉庫は積算が出るため融資もつきやすく、買い付けが入ったのだと思われます。

――物流施設は確かに需要がありそうです。

 一方で用途地域が限定されるので需要の割に供給が少ないです。空室リスクが低く、高めの家賃収入も得られやすい。管理に手間がかからず、支出も少ないです。その分、将来の売却での心配も少ないでしょう。法人に貸すという意味では、オフィスも管理の手間がかかりません。投資額が10億円でも、テナント数は10件ほどしかありません。住居で10億円の規模になるとそうはいきません。入居者が増えれば管理の手間も増えます。所有する不動産をオフィスビルに替えていけば、子どもの代になっても売ろうとならないでしょう。

――賃貸住宅は立地が一番です。

 立地は重要です。当社も買い換え特例と小規模宅地等の特例を活用して、都心の地価の高い場所の賃貸住宅を探して購入の提案をするケースが多いです。あとは、特徴があるかどうかが重要ですね。当社では、IoT対応や防音性の高いマンションを開発し、販売しています。

――特例を上手に活用して、相続対策をしつつ、いい不動産を探すのは大変です。

 それをやっていくには相談相手が必要です。不動産オーナーの中には一人親方で対応している人が多いと思います。専門スタッフを雇用したり、外部の専門家と日頃から意見や情報を交換できる体制をつくったりする必要があります。やはり一番は資産税に強い税理士や司法書士、信託銀行、不動産会社など有能なブレーンを抱えることで、有益な決定ができます。

アズ企画設計(東京都千代田区)松本俊人 社長(63)

1960年4月9日生まれ。東京都渋谷区出身。中央大学商学部卒業。89年4月にアズ企画設計を設立。2018年にジャスダック上場。現在、東証スタンダード市場に上場する。

(2024年1月号掲載)

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