学生
アジア圏からの留学生が増加
食事付きと交流空間のニーズが増す
「少子化が進んでいますが進学率は依然として高く、特に東京都心では学生数は微増で推移しています。23年は留学生の増加が目立ち、当社が管理する大学の国際寮だけでなく、学生マンションでも留学生の入居者が増えました。国籍は中国を中心としたアジア圏が多いです」
そう話すのは、5万3300室の学生向けマンションや学生寮を管理・運営する学生情報センター(京都市)、総務部広報室の寺田律子室長。留学生が望む物件は、日本人学生とほぼ同じで、家具・家電付きがやや好まれる程度の差異だという。
将来的にも、留学生数は増加の見込みだ。22年の外国人留学生数は約23万人(*独立行政法人日本学生支援機構「2022(令和4)年度外国人留学生在籍状況調査結果」から)。文部科学省は27年までに30万人超に回復させる方針。さらに23年3月に政府が行った「教育未来創造会議」では、33年までに留学生を40万人受け入れると発表された。
開発事業者にメリット大 学生専用マンション
この5年で、「寮」と「マンション」を掛け合わせたような「学生レジデンス」が増えたという。「学生レジデンスはバス・トイレ別の個室で、プライバシーは確保。共用スペースがあり、食事を提供するカフェテリアやシェアラウンジで学生同士の交流が図れる物件です。門限などの秩序を重視した規則はなく、ほかの大学の学生と自由にコミュニケーションを取ることができます」(寺田室長)
同社が管理・運営する学生レジデンスは、全国で約60棟。18年には8棟だったというから、5年で7倍以上に伸た。
背景には、ファミリータイプの分譲マンションを開発してきた不動産デベロッパーをはじめ、インフラ企業や商社が、学生専用事業へ新規参入していることがある。
マンションの場合、「駅近」や「日当たり」という立地条件が入居募集に大きく影響するが、学生専用の場合は、学校への通いやすさが優先されるなど一般の物件とは評価軸が異なる。さらに学生は、4月に入居して4年後の3月に退去というように入退去の時期がそろうため、安定運営ができるメリットがある。立地によっては分譲や一般賃貸マンションより専有面積あたりの単価が高くなり、土地の有効活用の最適化から学生専用が選ばれているという。
そうして開発された学生専用は、従来から重視されてきたセキュリティーに加え、各種設備が充実。「最近は、親だけでなく、栄養バランスの取れた食事付きに魅力を感じる健康志向の高い学生も多いです。親としては、子どもが孤立せずに楽しく過ごしてほしいという願いがあり、共用部が充実した物件への支持も高いです」(寺田室長)
1.留学生数は回復。今後も増加する見込みは高い
2.学生レジデンスの存在感が増す
3.学生マンションに新規事業者の参入が相次ぐ
▲24年3月に完成予定の「リビオセゾン神戸元町」。全88室で共用部には6室のシェアスペースがある。事業主は日鉄興和不動産(東京都港区)で、学生情報センターが管理運営を受諾
(2024年1月号掲載)
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