【連載】パリの賃貸不動産事情 第4回

賃貸経営不動産投資

人気賃貸物件を内覧しよう

 ボンジュール! 夏になりました。今回は実際に内覧をしたときに感じたことや、不動産事業者による営業手法の違いについて話したいと思います。

賃貸の住宅内覧事情

 物件を選ぶ際には、フランスでの収入が家賃の3倍以上あることが目安になっています。私の場合、フランスでの収入がない状態で内覧を始めたため、申し込みの時点で断られることもありました。ただ、申し込み時点では、収入などの詳細は聞かれないことが多いです。

▲パリの賃貸物件の一例

 内覧をするには、まず電話で物件名と内覧したい旨を伝えます。驚くことに先方から日時を指定され、「その時間以外は内覧できない」と言われることもあります。担当者が一日中多数の内覧客に対応するためです。
 数多く内覧しましたが、スタイリッシュな案内役が多かったです。内覧後には、「詳しい情報は上司に聞くから、申込書と一緒に質問を書いて送ってくれ」と言われました。数多く集まる入居申し込みのメールを査定し、30分で内覧を済ませ、住む資格のある人にしか連絡をしません。とても効率的です。
 立地が良ければほとんどの物件に借り手がつくため、1日の内覧会で終了ということも少なくないようです。

自由に決める仲介手数料

▲件バルコニーが付いている階が決まっているオスマン様式の内覧物件 

フランスの不動産事業者は仲介手数料を自由に定めます。良い物件を持っていて仲介に自信があれば、自社で手数料を上げることができるのです。
 借主と大家に求められる手数料が、店舗の外側から見えるように掲示されています。わが家の物件の場合、大家側の手数料は、1カ月分の家賃にサービス・交渉代金として家賃の約25%が上乗せされ、合計で家賃の125%程度です。私たち借主の手数料は1㎡につき15ユーロ(約2400円)でした。これで1日の内覧で入居者が決まるなら悪くはないですよね。売買の仲介手数料はまた違うので、次回話します。

 興味深い話が一つ。家族4人の住まいを探していると問い合わせをすると、150㎡程度で家賃が5000ユーロ(約80万円)の家を勧められました。「そんな予算はないので、小さいほうで大丈夫です」と言うと、「ああそうか。君たちは日本人だしね」と返事をされました。日本人は小さな家でも住める民族と認識されているのでしょう。

治安と学区を調べる

▲内覧では階段の美しさも確認

 賃貸物件探しで忘れてはいけないのが、治安と学区です。

 日本でも同様だと思いますが、親は治安の良い学区の学校に通わせるため、住む地域を選ぶと思います。また私の場合は店舗が6区にあるので、家も店舗から歩いて通うことができる6区で選びました。

 子どもたちは6区の小学校と中学校に通っています。日本とは違う入試制度であり、学校での生活態度や日々の学校での勉強に対して点数がつけられるので、良い学校に進学したい子どもは日々の学校生活に真面目に取り組み、しっかりと勉強に励みます。塾に通う文化はありません。

 学校の平均点数が公開されているので、治安が良くお行儀の良い学校に通わせることで、最終的に良い大学を選べるようになっています。

 ただ、パリ中心部の治安が良い地域であっても、部分的に危険なスポットもあります。特定の移民が集まっており、住民も近づかないような場所もあるのです。

 住んでみないとわからないことも多いので、家探しをするときは必ず足を運び、その周りの環境や賃貸市場を調べる必要があります。

▲仲介手数料の掲示 ※撮影 坂田夏水

 

建材紹介

部屋の印象を決めるアイテムとして、空間を彩る照明器具はとても大切です。クラシックやモダン、ビンテージ風などデザインの種類もたくさんあります。
私が運営しているインターネットショップ「MATERIAL(マテリアル)」でもさまざまなデザインの照明を取り扱っています。

夏水組(東京都武蔵野市)
坂田夏水 代表

プロフィール
1980年生まれ。2004年武蔵野美術大学卒業。アトリエ系設計事務所、工務店、不動産会社勤務を経て、夏水組設立。空間デザインのほか、商品企画のコンサルティングやプロダクトデザイン、インテリアショップ「Decor Interior Tokyo(デコールインテリアトーキョー)」、インターネットショップ「MATERIAL(マテリアル)」の運営などを手がける。22 年よりパリで日本の建材店「BOLANDO(ボランド)」の運営を開始、現在パリ在住。

(2024年8月号掲載)

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