【連載】パリの賃貸不動産事情:第3回

賃貸経営トレンド#不動産#断熱#パリ

 パリの街中を歩いていると、ブティックのような雰囲気のおしゃれな不動産店舗を多数見かけます。そして、店舗の中をのぞくと、まるで老舗アパレルブランドのスタッフのような人が働いています。日本の不動産業界のイメージとは大違いです。

 不動産の情報収集が趣味である私は、そんな不動産店舗の前を通るとつい足が止まります。不動産に限らず、高級で良いものを売るためには、空間も人も美しくエレガントであるべき、という考えが表れているのがフランスの街並みなのです。

▲パリ6区のおしゃれな不動産店舗の外観

地域による価格差

 東京23区と同様、パリも区によって不動産価格の相場は異なります。治安と学区も関係します。パリ中心部だと80㎡で2500ユーロ程度(約40万円)、中心部から離れると1800ユーロ程度(約29万円)です。
 私が2年前にパリで家探しをしたときの経験ですが、パリの中心部に引っ越したくて物件探しをしている人はかなり多いです。そのため良い物件は高くてもすぐになくなります。

▲月額9000ユーロ(約140万円)の賃貸物件 ※撮影 坂田夏水

代表的な情報サイトの特徴

 賃貸でも売買でも決まった物件の窓には大きく「VENDU」(ヴァンドュ、契約・売却済み)と、不動産事業者の名前とともに掲示されます。「この超高級物件を仲介したのは俺たちさ」という意味の看板で次の営業につながっているようです。
 パリの物件探しは、フランスの不動産情報サイト「SeLoger」(セロジェ)から始まります。大手サイトであるため、物件情報が豊富で更新率も高いです。しかし、地図で探したい、近隣を確認したいときは、「bien'ici」(ビアンイッシ)というサイトがとても役に立ちました。地図上で物件を選択し、詳細を確認することができるので、不動産探しが好きな人にとっては見ているだけでも楽しいサイトです。

 そのほか、仲介事業者を通さず大家と直接連絡を取ることができる「PAP」(ペーアーペー)。こちらもとても人気で、良い物件が出ると問い合わせが殺到するそうです。大家は問い合わせの中から、自分好みの人を選んで決めることができます。
 実は、私のパリの店舗はこのPAPで見つけました。フランスでは仲介手数料はかかりませんでしたが、店舗を引き継ぐための権利金が必要です。そのため、弁護士を立てて直接大家と契約しました。

▲内覧した部屋は3階の角部屋

断熱性能への取り組み

 フランスでは断熱性能が重要視されています。2007年から、住宅のエネルギー性能診断(DPE、デーペーウー)により各住宅がAからGまでランク付けされ、Eランク以降は賃貸規制を受けるようになっています。断熱効率が悪い住宅をなくすための国の指針ですが、Eランク以降の住宅はなんと全体の17%に相当する520万戸だそうです。工事費が格段に日本より高いので、フランスの大家も楽ではありません。

 パリの建築物は石造りで古いのですが、日本の住宅よりもずっと断熱性能は高いと思います。冬は暖かく夏は涼しい。断熱性能が良いということは、無駄な電気や自然エネルギーを使う必要がないということなのです。「地球にとって良い」というのが合言葉。

 パリでエアコンが流通しないのは、景観が悪くなるだけでなく、地球にとって良くないものをわざわざ設置するなんてモラルのない人だという印象を与えるからなのです。

 日本でも24年に入り、建築物への断熱性能の対応が始まりました。それと同じように、歴史や文化が賃貸住宅の価値に結び付くパリのように、日本でも築古物件が認められるようになればいいなと思います。

▲内覧した物件のテラスからの景色

【建材紹介】

 日本と海外の壁紙には大きな違いがあることをご存じですか。
国産は表がビニールで裏は紙ですが、海外のものは、表も裏もフリース素材に特殊印刷が施されています。剥がしやすく、場合によっては再利用することもできます。
こちらはゴッホの絵画をモチーフにしたオランダの壁紙です。

プロフィール
夏水組(東京都武蔵野市)坂田夏水 代表

1980年生まれ。2004年武蔵野美術大学卒業。アトリエ系設計事務所、工務店、不動産会社勤務を経て、夏水組設立。空間デザインのほか、商品企画のコンサルティングやプロダクトデザイン、インテリアショップ「Decor Interior Tokyo(デコールインテリアトーキョー)」、インターネットショップ「MATERIAL(マテリアル)」の運営などを手がける。22 年よりパリで日本の建材店「BOLANDO(ボランド)」の運営を開始、現在パリ在住。

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