【特集】飼育ニーズ拡大中 ペット 共生物件①

賃貸経営空室対策

単にペットを飼うことができる物件とは一線を画す「ペット共生物件」。物件の付加価値アップに有効なものとしても注目度が上がっており、関心を寄せる家主も多いだろう。所有物件をペット共生物件にするにあたっての注意点と事例、そしておすすめのアイテムを紹介する。

飼い主側のリテラシー高まる中、管理に失敗しないためのチェックポイント

ペット共生物件を手がける前に気を付けておきたい点を専門家に聞いた。

サイト掲載件数が右肩上がり

 近年、ペット共生物件に注目が集まっている。ペットの飼育が許可されているだけの「ペット飼育可能物件(以下、ペット可物件)」とは異なり、人と動物が共に暮らしやすいように工夫された物件のことだ。

 不動産ポータルサイト「SUUMO(スーモ)」を運営するリクルート(東京都千代田区)によると、同サイトにおいてペット飼育が相談可能な物件の掲載件数は、2021年以降増え続けている。全体の掲載件数のうちに占める割合は、19年1月1日時点で10%だったが、24年1月1日時点で18%まで伸びた。21年に同社が行った調査では、賃貸住宅居住者のうちペット飼育者は15・6%。一方、賃貸住宅居住者の約57%はペットを飼いたいと回答している。潜在的な需要も見込まれることから、賃貸住宅におけるペット飼育のニーズは今後も拡大していくと見て取れる。

※リクルート発表資料を基に全国賃貸住宅新聞で作成

 ニーズをうまく拾って入居者を獲得できるのであれば、家主もペット共生物件の経営に関心が向くだろう。成功させるためにも、留意しておきたいポイントを専門家に聞いた。

安易に着手するのはNG

 ペットビジネスおよびペット共生型マンションのコンサルティングを行うペイク(東京都渋谷区)の野中英樹社長によれば、建築費が高騰している中、少しでも賃料を上げて利回りを高めるために、安易にペット可物件やペット共生物件に着手する不動産会社や家主が多くなっているという。しかしながら、ペット可物件、ペット共生物件共にリスクも存在するので、注意が必要と警鐘を鳴らす。

 イメージしやすいリスクは、例えばペットがほえたり鳴いたりする声や、臭いによる入居者間のトラブルだ。ペット可物件であれば、ペットを飼育していない入居者もいるため、相互の理解不足が原因となってトラブルに発展することも考えられる。中にはペットを嫌いな入居者もいるかもしれない。

 ペット共生物件にもペットを飼っていない人が住んでいることもある。しかし、物件自体がペット共生をうたっているため、ペットを飼っていない人と飼っている人との互いの理解度は、ペット可物件よりも深まることが見込まれる。

 野中社長は、ささいなマナー違反やルール違反が住民同士の不和につながり、それが管理会社の負担となり、最悪の場合は訴訟問題にまで発展することがあると指摘する。

管理会社のリテラシーに注意

 「リスクについて深く理解していない不動産会社や管理会社もあります。ペット市場は新型コロナウイルス下でも成長し、ペット飼育世帯も増えて、ペット共生に対する飼い主側のリテラシーは高まっています。一方で、土地の有効活用を提案する不動産会社や管理会社など供給側のリテラシーが追い付いていません」(野中社長)
それでは、供給側のリテラシーの程度を見分けるには、どのような点をチェックすればいいのか。

 野中社長によると、例えば管理会社でいえば、まずはペット可物件やペット共生物件の管理経験があるかどうかがポイントになるという。「そのうえで、入居者のペットについて、狂犬病の予防接種済みの確認を毎年しているようであれば、なおいいです。家主は、管理会社がしっかりとノウハウを持っているかどうか把握しておくべきです」と語る。

 ペット共生物件をこれから検討してみようと考えている家主は、気になる点は専門家に相談してみるといい。ペット共生物件は家賃アップの成功例も多く見られる。しっかりとした知見を得たうえで、新たなビジネスチャンスと捉えてみてはどうか。

 30年以上のノウハウを生かしたペットケアサポート付き物件 
ペイク
 30年以上にわたり、賃貸、分譲を含めて累計約5000戸でペット共生のコンサルティングを行ってきたペイク。自社企画のペット共生物件も1990年から3ブランドを手がけている。
 2021年から展開する「animan(アニマン)」は、獣医師が監修し、自社開発の設備をそろえているのが特徴だ。例えば、散歩中に出た犬の排せつ物を捨てる「うんちシューター」は、散歩が集中する朝の特定の時間帯に大量のふんが捨てられることまでを想定して設計されているため、詰まりを起こさない。ソフト面では規約のサンプルや入居診断ツールも提供する。現在、全国で5棟を展開。いずれも賃料は周辺相場より2万~3万円高いという。
 野中社長は、ペットと暮らすことができる集合住宅は「ペット可、ペット仕様(共生)、アニマンの3つのタイプが存在しています」とし、その定義付けについても提唱している。

ペイク(東京都渋谷区)
野中英樹社長(60)

(2025年1月号掲載)
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【特集】飼育ニーズ拡大中 ペット 共生物件②猫の特性に合わせる

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