永井ゆかりの 刮目 相待「快適な暮らしの追求 家賃が上昇」

賃貸経営トレンド#永井ゆかりの刮目相待

2023年から大都市圏の家賃が上昇している。不動産情報サービスのアットホーム(東京都大田区)が毎月発表する「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向」によると、23年12月は特に多くのエリアで50㎡以上のファミリー向け物件の家賃が上昇した。前年同月比で3%以上上昇したケースが目立つ。
 理由は主に三つ。一つ目は、建築費の高騰のため、新築の募集家賃も上がっていること。二つ目は、インフレと賃料上昇傾向の影響だ。中古物件についても、きちんとメンテナンスしている物件であれば家賃を上げて募集しても決まるケースが目立つ。三つ目は、不動産価格の上昇でマイホーム取得希望者が購入できず、賃貸住宅に流れていることが挙げられる。
 家主にとっても、設備導入費やリフォーム費などの工事費の負担が増している中で、家賃を上げていかないと収益性が低くなってしまうという事情もある。退去のタイミングで家賃をアップできれば、コスト負担増をカバーできる。

今こそ付加価値アップ

 これまで家賃は景気の影響を受けにくいとされてきた。そのため、築年数が古くなると、家賃の下落は免れなかった。そう考えると、今は家賃アップの絶好のチャンスかもしれない。
 しかしながら、今家賃を上げて契約できたとしても、数年後に退去が発生したときに同じ家賃で決まるとは限らないから油断は禁物だろう。それだけの価値があるかどうか、つまり入居者がその家賃でも住みたいと思うかが結局のところ重要になってくるからだ。
 先日取材した、川崎市に築37年の賃貸マンションを所有する池上正芳オーナーは、家賃を確実に上げているオーナーの一人。全42戸ある同建物の専有面積は約16㎡という小さいワンルームで、なおかつターミナル駅ではない最寄り駅から徒歩7分という立地だ。もともと家賃は4万5000円だったが、リノベーションしたことで、1万8000円高い6万3000円で次の入居者と契約することができた。しかも、家賃とは別に受け取る共益費も4000円から5000円にアップ。共益費も含めると、入居者から毎月受け取る金額は実に51%ほど上昇した。
 池上オーナーが家賃アップに成功できた大きな理由は、部屋のリノベだ。ただそれだけではない。もう一つは「サードプレイス」と呼ぶ共用スペースの付加価値も大きいのだ。23年に1部屋を共用スペースに変更した。その場所では仕事してもよし、勉強してもよし、貸し切りをして友達と食事会をするのもよし。コーヒーは無料で飲めるし、約1000冊あるマンガも読み放題。
 「部屋は少し狭くても快適に住めるようにしたい」という思いが入居者に伝わるのだ。
 環境要因で家賃を上げられる今だからこそ、付加価値を高めるための努力が重要ではないだろうか。

Profile:永井ゆかり
東京都生まれ。日本女子大学卒業後、「亀岡大郎取材班グループ」に入社。リフォーム業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌などの記者を経て、2003年1月「週刊全国賃貸住宅新聞」の編集デスク就任。翌年取締役に就任。現在「家主と地主」編集長。著書に「生涯現役で稼ぐ!サラリーマン家主入門」(プレジデント社)がある。

 

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