相続対策と一口にいっても、いざ発生してからできることは限られる。税金対策に限らない準備を事前に行うことで、結果的に納税時の困り事が減るだろう。今回は相続で「困ったとき」に頼りになる専門家やサービスを紹介する。
節税対策より先に考える 円満相続に必要な準備
「受け継いでよかった」と思われる財産にする
相続対策というと、すぐに頭に浮かぶのは税金対策ではないだろうか。特に不動産資産の割合が多い地主や家主は、納税資金の確保に苦労するケースが多い。税額をできる限り抑えるために新しく借り入れをして、相続税評価額を下げるというのはこれまでも多く取られてきた手法だ。
だが、相続税を納め終わると、借金の多い財産を受け継いだ相続人たちの苦難が始まるという話はよく聞く。一方で、何とかして相続税を抑えないと、納税資金を捻出できないという実情もある。
そこで見直したいのが、今ある不動産資産の収益性。空室だらけの賃貸不動産を所有しているのであれば、まずは収益化して家賃収入を増やす。増えた家賃収入をためて納税資金に充てることもできるし、その資金を原資にして、別の資産運用をするのも一つの手だ。
あるいは、古いビルだと入居者から家賃の減額交渉が入ることもあるだろう。その家賃が本当に適切なのかどうか、専門家による調査を受ければ、家賃を減額せずに済むし、場合によっては上げることも可能かもしれない。
すぐに節税を考えるのではなく、まずは今ある不動産を見直す。収益化が困難な場合は、売却も選択肢の一つに入れて考えることが重要になる。家族には相続が終わった後に大きな負債を背負わされるよりもこうした施策を打つことが、喜ばれるのではないだろうか。
優秀な専門家と出会うために自身の情報収集が必要
節税ありきの相続対策については、慎重になったほうがいいが、税制に関する情報を収集することは必要だ。
例えば、「配偶者居住権」は民法の相続に関する規定(相続法)の改正により、2020年に創設された。民法の改正が大きく関わっていることから、税理士の間でも相続対策として採用するケースはまだそれほど多くはないようだ。だが、コチラの解説を読んでもらえればわかるが、条件に合う人にとって相続人間でのトラブル防止や節税においてメリットは大きい。
こうした法改正に関する知識も、相続対策の大きなヒントになる。自身の相続で実際に採用するメリットがあるのかわからなかったとしても、情報を持ってさえいればその分野に詳しい専門家に相談することができる。しかし、知らなければ、当然相談することはできない。
有効な情報集めには、自身がどれだけベースとなる情報や知識を持っているのかが大事だ。間違った認識だったとしても、専門家にその誤りを指摘してもらい、正しい情報を入手することもできる。専門家や事業者を選ぶ際も、自身が持つある程度の情報や知識の疑問点を明確に教えてくれる人であるかどうかが判断軸になる。
いずれにしても、相続は発生前の準備がその後に大きな影響をもたらす。今回は多分野で実績のある専門家や事業者を紹介している。彼らの知見を生かして、相続対策に役立ててほしい。
■被相続人数の推移
(2025年1月号掲載)
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