【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善:8月号

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税金を抑える ~経費の勘違い! 経費計上のタイミング~

 キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。

 前回に続き、③の税金を抑える方法を解説していきます。

 前回は、経費を使うことで税金は減りますが、「お金を残す」という意味での「本当の節税」にはならないと解説しました。誤解がないように補足すると、「経費を使うな」と言っているわけではありません。経費を使うのであれば、どの程度の節税になるのか、その効果を把握したうえで、戦略的に使うことが効果的です。

 大家さんの中には、確定申告での税金が高くならないように、年末近くになると経費を多く使わなければならないと思っている人がいます。それは、本当にその年中に使うべきなのでしょうか。

 わかりにくいと思いますので、次の問題を通して考えてみましょう。

《問題》
 課税所得金額が1000万円ある人がいます。3年間で、1年目に300万円の経費を使う(A)のと、1年あたり100万円の経費を3年間使う(B)のでは、どちらが税金上で有利になるでしょうか?

 

 支出する金額の合計は300万円で、(A)(B)どちらも同じです。1年間で支出するのか、3年間に分けて支出するのか、支出のタイミングが違うだけです。何となく、「300万円を1回で使うほうが、税金が大きく減るのではないか」と考える人が多いのではないでしょうか。

 それでは正解を見てみましょう。1年目から3年目にかかる所得税・住民税を算出し、比較します。3年間の所得と経費の額は同じですが、支払う税金の額は異なってきます。

 3年間のトータルでは、(A)の税金の合計が730万円、(B)の税金の合計が708万円となります。(B)のほうが22万円税金が安くなるのです。支出した金額が同じなのに、100万円を3年間にわたって使ったほうが、税金が低くなっています。

 実は、経費は1回で使うよりも、複数年に分散させて使うほうが、税金的には得になることがあるのです。これを「経費の分散化」と私はいっています。この仕組みを理解することは、「本当の節税」を知るために重要です。

「経費の分散化」については、次回詳しく解説します。

 

解説
Knees bee(ニーズビー)税理士法人
(東京都千代田区) 代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。

(2024年8月号掲載)

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【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善:7月号掲載

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