節税効果が変わる会社の活用方式

税務法人設立#確定申告後に考える 法人化で節税

法人を設立する際に考えるべきなのが事業方式で、賃貸経営をする場合は、
主に三つに分けられる。それぞれを詳しく解説する。

 

法人に管理のみ委託する

 個人で所有している不動産を、設立した法人に管理委託する方式だ。家主は家賃収入の中から管理料分を法人へ支払うことで、収入を分散することができる。
「ただし、管理料は家賃の5%程度が相場で、相場と大きく異なる金額を設定することはできません。所得税法第157条により、所得税の負担を不当に減少させる結果となる取引や税の計算をすると、税務署から否認される可能性があるからです」と話すのは、税理士法人安心資産税会計(東京都北区)の平田康治税理士だ。
 不動産の所有者は変わらないため、入居者と賃貸借契約を結び直す必要はなく、3方式の中で最も手間がかからない。ただし、節税効果もいちばん小さく、法人としての売り上げも少ないため、経費として使える金額も少なくなる。

 

法人が建物を一括借り上げ

設立した法人が個人で所有する物件を借り上げる方式。法人は空室でも賃料が発生するリスクがあるため、満室想定家賃の一定額を差し引いた家賃を家主に支払う。満室想定家賃の90~80%が相場で、不当に低い家賃の場合は、税務調査での否認リスクが生じる。
貸主がサブリースを行う法人となるため、入居者との契約変更手続きが必要だ。「不動産の所有権を移すコストがかからず、家賃収入を最大で20%程度分散できるため、この方式をまず選ぶ家主は多いです」(平田税理士)

税理士法人安心資産税会計(東京都北区)
平田康治税理士 

 

 

法人が建物の所有権をもつ

 土地の所有権は個人のまま、建物の所有権だけを設立した会社に移転する方式のこと。会社は地代を地主個人に毎月支払い、賃料はすべて会社の収入になる。サブリース方式と同じく、入居者との契約変更手続きが必要になるうえ、移転コストもかかるが、節税効果は3方式の中で最も高くなる。
個人所有の建物の所有権を、法人に移すには「贈与」「売却」「現物出資」のいずれかを選択する必要がある。
「売却により移転させるのが一般的です。土地を代々引き継いでいる地主の場合、土地を法人に売却すると取得費は売値の5%となり、譲渡税が高額になります。登録免許税と不動産取得税の支払いも大きいです。建物だけを法人に移すケースが多いのはそのためです」(平田税理士)
建物のみを売却する際は、一般的に簿価で売却し、土地は個人名義のままで、「土地の無償返還に関する届出書」を提出するか、「相当の地代」を支払えば、権利金の認定課税は行われない。

■建物所有方式のポイント

 

建物の所有権を法人に売却して移転するケース
※法人に購入資金がない場合は、分割して支払う

MEMO
【土地の無償返還に関する届出書】
通常、個人所有の土地を法人が建物所有目的で借りた際、権利金の支払いがない場合には、借主の法人に課税される。しかし、税務署に「将来土地を無償で返還する旨」を約束する書面を提出することで課税されなくなる。
【相当の地代】
地代の目安は土地の更地価額の6%程度で、適時見直すことが必要だ。

 

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