<解説>
Knees bee(ニーズビー)税理士法人(東京都千代田区)
代表 渡邊浩滋税理士・司法書士
危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。
キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。
前回に続き、③の経費に関する誤解を解いていきます。
税務署職員は常に正しいのか
「経費になるかどうかは、税務署に聞けば教えてくれるよ」という家主がいます。
確かに、税務署には相談窓口があり、申告前に税金の相談をすることができます。税務署の職員に事前に相談して、経費だと認めてもらえれば大丈夫だろうと思うかもしれません。しかし、税務調査や裁判などで、その判断がひっくり返ることはよくあります。
国税庁には「税務署職員が納税者に対して誤った指導を行い、納税者がその指導に従ったことにより過少申告となった場合には、過少申告加算税・無申告加算税を課さない」という事務運営指針の規定があります。
税務署の誤った指導によって過少申告となっても、そのことにペナルティーは課さないが、本来納めるべき税金はしっかり納めなければならないということです。東京地裁の平成19年9月14日の判決において、税務署の誤った指導について言及しています。
「税務相談における税務署職員による指導ないし助言は、相談者に対して、一応の参考意見を示すものにとどまり、相談者がその指導ないし助言の内容のとおりに納税申告をした場合にその申告内容を是認することまでを意味するものではなく、最終的にどのような納税申告をすべきかは、納税者の判断と責任に任されているというべきである」
税務署の職員は、税理士ではありません。税法を十分理解していない可能性があるのです。
実際にあった!税務調査でのやりとり
私は過去に家主の税務調査に立ち会ったとき、ある税務調査官の、耳を疑うような発言を聞いたことがあります。
調査官 大家さんには交際費は一切認められていないのですよ。
私 その根拠は何ですか。条文に書いてあるのですか。
調査官 いえ、条文には書いていないのですが、条文の解釈として、直接関係する経費でないと認められないことになっています。
私 それでは個人事業でやっている不動産事業者はどうなのですか。直接関係する交際費でないと認められないのですか。
調査官 不動産事業者は交際費として認めています。
私 不動産事業者と家主では何が違うのですか。事業所得と不動産所得ですか? 経費計上の条文では、事業所得と不動産所得の区別なんてしていないですよ。
調査官 うちの税務署ではそう教えられてきました。
私 理由になっていない!
これでも税務署の職員が全て正しいといえるでしょうか。最終的には自分で判断をしていかなければならないのです。