社宅や社員寮をコミュニティー住宅へ再生
主に社員寮をリノベーションした賃貸住宅を約1400戸運営するのが、JR東日本ソーシャルデザイン(東京都目黒区)。外国人入居者と交流できることを強みに、入居率は94%前後だという。JRグループに入り、さらなる成長を図る同社の麻生次郎社長に、今後の展開について聞いた。
JR東日本ソーシャルデザイン(東京都目黒区)
麻生次郎社長(58)
外国人入居者が3割占める
JR東日本ソーシャルデザインは、大型の寮・社宅・共同住宅をリノベして、共用部に付加価値を付けた「コミュニティー住宅(シェアハウス型)」を管理運営している。本格的にコミュニティー住宅事業を展開し始めたのが2009年で、JRグループの社宅なども含めて、33棟1390戸(24年6月6日時点)を管理する。
同社が運営する物件の特徴は、常に一定数の外国人入居者がいて、交流できることだ。事業スタート当初から入居者の2割を外国人が占めるように努めてきたという。「うちのようなコミュニティー賃貸住宅に住みたいと思う人には、海外から帰国したばかりとか、海外での生活経験者が少なくないです。そういう人たちが英語を話せる機会や国際交流できる機会を提供することは重要だと思っています」。こう話すのは、麻生次郎社長だ。
今はインバウンド(訪日外国人)の影響で全入居者の3割が外国人。多い物件では半数を占めるケースもあるという。最近はワーキングホリデーを利用して来日し、入居する人が増えていることが影響しているようだ。
元入居者の社員が多い
▲外国人入居者と交流できるシェアハウス
同社では入居者向けのイベントの開催も積極的に行っている。管理物件全体としては、新規の入居者とその月の誕生日の人に声をかけて毎月お祝い会を実施。
また、夏はマリンスポーツとバーベキュー、冬はスキー旅行も企画する。「スキー旅行には50人くらい参加して盛り上がりますよ」(麻生社長)。
物件ごとでもそれぞれ入居者が企画してイベントを行う。防音室がある物件では、入居者に現役の舞台俳優や歌手がいるので、音楽会を実施している。
こうした入居者同士はもちろん、スタッフも一緒になって過ごす時間が多いことから、社員にはもともと管理物件の入居者が多い。「社員は16人いますが、2人を除いてみな入居者という関係から始まっています」(麻生社長)。それだけ入居者たちと良好な関係を築いているのだろう。
同社には四つの運営受託タイプがある。一つ目はサブリース、二つ目は運営受託のみ。三つ目はオーナーに物件を購入してもらい、運営受託するタイプ。そして、四つ目が物件の購入後にコミュニティー住宅にリノベして収益化できたら別のオーナーへ売却し、売却後も運営受託をするタイプだ。今もこの四つのタイプで運営受託を増やしているところだという。
▲こだわりのインテリアが特長の共用スペース
JRの信用力が強み
管理物件に社員寮からの改装が多い理由は、社員寮の再活用として、オーナーから注目されていることが大きい。かつては社員寮の再活用法として、シェアハウスのほかに、高齢者施設もあった。ところが、法律が改正されたため、廊下の幅の拡大やスプリンクラーの設置義務などの建築基準が厳しくなり、社員寮の改装だとコストが割高になる状況になってしまった。
同社の物件第1号も新聞社の元社員寮だ。09年当時は少しずつシェアハウスという住まい方が認識され始めた時代。「そんなときに相談を受け、取得したのが新聞社の元独身寮でした」と麻生社長は当時を振り返る。
40室のうち2室は共用スペースとして改装し、38室で募集をした。オープンしたのが、夏の閑散期だったが、募集して1カ月で満室になり、麻生社長にとっても寮をシェアハウス化する可能性を強く感じた物件だったという。その後、大手デベロッパーや大手飲食店の社員寮をリニューアルしてコミュニティー住宅をオープンし、運営受託を増やしてきた。
20年にジェイアール東日本都市開発(東京都渋谷区)と資本提携した。JR東日本グループということで、JRの信用力を武器に新規管理受託や買い取りを増やしている。
「今後は社員寮を購入し、リノベして、売却する案件を増やしたいです。また、現在入居者の大半は20代から30代ですが、これからは高齢者に向けた物件の運営もしていきたいと思います。これからの時代はますますコミュニティーのある暮らしが必要だと思っているからです」と語る麻生社長。コミュニティー住宅の管理拡大を目指す。
(2024年9月号掲載)
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