資産価値を維持する 〝省エネ〟 賃貸住宅

土地活用賃貸住宅

第15回 高気密・高断熱住宅は家事を快適にする

 2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、住宅の省エネルギー性能の向上が話題になっている。これからの賃貸住宅市場においても省エネ性能向上が注目されつつある。高気密・高断熱住宅を手がける建築会社を家主に紹介する住まいるサポート(神奈川県鎌倉市)の代表取締役の高橋彰氏が省エネの重要性をわかりやすく解説する。

住まいるサポート
(神奈川県鎌倉市)高橋 彰代表取締役

全国で180社以上の工務店などと提携し、家主とのマッチングを中心に高気密・高断熱住宅に特化した住まいづくりのサポートサービスを提供。性能にこだわる建築家の紹介や、高断熱賃貸住宅プロジェクトサポートも手がける。
東京大学大学院修了。現在、同大博士課程で高断熱木造建築について研究中。

賃貸住宅経営のカギ快適な居住環境の提供

 今後、空室リスクがますます高まる中、入居者の満足度を上げて退去リスクを下げることが、賃貸住宅を経営するうえで重要であることに異論はないと思います。

 高気密・高断熱の賃貸住宅は、供給はまだわずかで、限られた事例に基づいたことではありますが、退去率が非常に低く、賃貸経営はきわめて安定しているようです。

家事が楽になったと約4割が回答

 高断熱住宅がテーマの住宅雑誌「だん03(2019 スプリング)」(新建新聞社)で、「高断熱住宅に住むママ100人に聞きました。暮らしてみて『変わった』と感じることは?」というアンケートがありました。回答の第1位は「光熱費が下がった」で、45%。第2位の「家事が楽になった」は43%と、1位とほぼ同率の結果でした。
 高気密・高断熱住宅が家事を楽にするというのは、ピンとこないかもしれません。ですが、さまざまな要因により、家事がとても楽になるのです。

家事に手がかからなくなる5つの理由

  1. 冬の朝の寒さを解消: 断熱性能の低い家では、冬の朝に起き出すのはつらいことだと思います。暖房をつけて、部屋が暖まるまでなかなか活動できません。ところが高気密・高断熱の家では、夜に暖房を切っても、朝まで室温はそれほど下がりません。そのため、ベッドから出るのに勇気がいるということがありませんし、着込まなくても寒くないためパジャマ姿のままでも、朝食の準備に取りかかれるのです。
  2. 料理中も足元が温かい:キッチンで換気扇を回すと、冬場はとても寒くなります。これは、そもそも家が寒いうえに、気密が取れていないことで、換気扇からの排気分の冷気が隙間から吹き込み、足腰を冷やすことによります。高気密・高断熱の家では、室内が温かく、気密の確保ができているため、空気の流れが適切にコントロールされており、足元が寒くなるということがあまりありません。
  3. ほこりの付着が少ない:気密性能が低い家では、隙間風とともに、ほこりや花粉、砂ぼこりが侵入してきます。高気密化すると、24時間換気システムから給気される外気は、フィルターでほこりなどが除去されるため、室内の空気がきれいに保たれ、ほこりが立ちにくくなります。 また、室内の壁の仕上げはビニールクロスが一般的ですが、ビニールクロスは静電気を帯び、ほこりを付着させます。それが塊になって床に落ちるため、床にほこりがたまりやすくなります。 高気密・高断熱にしたうえで、自然素材系の壁の仕上げにすると、掃除機をかける回数や、フローリングワイパーのシートの消費量が減ったという入居者の声を耳にします。
  4. 結露がほぼ生じなくなる:窓の結露を拭くことが、冬の日課になっている家も多いと思いますが、それが不要になります。拭き取りを怠ると、カビが発生し、カビはダニの餌になり、家の中のアレルゲン(原因物質)が増加する要因となります。その結果、ぜんそくやアトピーなどのアレルギーを引き起こします。
  5. 風邪をひきにくい:ウイルスは、寒冷乾燥な環境を好み、高温多湿に弱いとされています。室温を快適な温度にして、湿度を50%程度に保つようにすると、ウイルスの生存率はかなり下がります。

 図2は無断熱住宅、一般的な新築住宅レベルの省エネ基準(断熱等級4)相当と、ある程度高断熱である断熱等級5相当の「UA値0・6」レベルの集合住宅における冬の風邪の発生率に関する研究結果を整理したものです。断熱等級6や7と比べた場合、この差はもっと大きくなるのではないかと思われます。

 風邪をひくと、家事だけでなく日常生活全体がおっくうになります。また、子どもが風邪をひきにくくなるのであれば、共働きが多い子育て世帯にとっては、とても大きなメリットだと思います。

省エネ性能表示制度で理解が高まる気運

 現在の賃貸住宅マーケットにおいては、賃借人の理解度が低いため、高断熱化は家賃の引き上げにはあまりつながらないのが実情です。しかし、一度住めば、間違いなく満足度は上がり、退去リスクは下がります。

 4月から、賃貸住宅などの「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」が始まりました。今後、高断熱住宅に関する理解度は高まるものと思われます。このような状況変化を念頭に置いて、これから賃貸住宅を建てるのであれば、高断熱化を図ることをおすすめします。


図1:高断熱住宅に住むママ100人に聞きました。
暮らしてみて「変わった」と感じることは?

(出所)「だん03(2019 スプリング)」を基に住まいるサポートが作成

図2:冬の風邪の発生率

(出所)「集合住宅における住戸位置ごとのエネルギー消費量および冬季健康性の検討(第2報)暖房方式と設定温度が居住者の健康に与える影響」2020.9.9 空気調和・衛生工学学会学術講演論文集を基に住まいるサポートが作成

(2024年5月号掲載)

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