注目の新築プロジェクト:共用部が魅力のワンルーム賃貸

土地活用賃貸住宅

外断熱で北海道の冬でも室内表面温度20度 120㎡の共用部が魅力のワンルーム賃貸 TONARINI(トナリニ:札幌市)

NUMANOI(東京都文京区)
左:沼野井諭代表(38)、右:沼野井百合氏(34)

 北海道大学から徒歩3分、札幌市営地下鉄南北線北12条駅から徒歩4分の場所に立つ「TONARINI(トナリニ)」は、共用部が特徴の賃貸住宅だ。

 「ワンルームマンションとシェアハウスの中間を目指しました」と、設計を担当したNUMANOI(ヌマノイ:東京都文京区)の沼野井諭代表は話す。札幌市内のワンルームは広さ25㎡程度が一般的だが、同物件では20㎡。「余剰分をコモンズとして集約し空間を確保しました。コモンズとは、キッチン付きラウンジ、スタディールーム、ランドリールームから成る共有スペースです」(沼野井代表)

 各部屋にはキッチン、風呂、トイレを完備。洗濯機置き場だけをなくし、コモンズにランドリールームをつくった。また、入居者を北海道大学の学生やその関係者に限定しているため、勉強用のスタディールームを設けた。コモンズの延べ床面積は120㎡だ。

 元々同地では、沼野井代表の妻で都市計画コンサルタントとして活躍する沼野井百合氏の親族が、1980年ごろから学生用マンションを経営していた。それを建て替えることになり、目指したのが、他者と接点を持つ機会を提供する賃貸住宅だ。

 こだわりはまだある。賃貸住宅では珍しい外断熱を採用。断熱等級は部屋により異なるが6~7相当を誇る。札幌市の2月の標準的な気温である最低気温マイナス7度、最高気温1・2度だった2024年2月7日に共用部の壁面と床面の温度測定を実施したところ、おおむね20度を維持していたという。「外断熱にすることで建築費はおよそ500万円上がりました。一方で、室内は低コストでメンテナンスの手間がかからないコンクリート打ち放しですが、快適な温度で過ごすことができます」(沼野井代表)

 共益費は1万4000円。それでコモンズの光熱費や機器使用料、運営費を賄っている。ただ、家賃と合わせた金額は、周辺の食事付き学生寮の食事抜きの金額より低く抑えた。コモンズは来客の利用も可能。「空きが出たら入居したい」という問い合わせが複数あり、実際に入居した人もいる。

 さらに、入居者の代表がコモンズコーディネーターとなり、家主と管理会社をつないだり希望や困り事を伝えたりする仕組みを導入。「土地代がゼロのため、事業的な余力を居場所づくりやコミュニティー形成に還元できました。地主だからこそできる賃貸企画だと思います」と沼野井代表は話す。

▲道路に対して斜めに窓があることで、室内から街に対してさまざまな方向に視線が抜ける

▲ラウンジを含むコモンズには、自由に使える掃除機やプロジェクター、A4複合機など共用の備品も置いてある

▲2階にあるラウンジの天井の一部は3階まで吹き抜けの3・7m

▲一人暮らし初心者が多い春にはイベントを開催した

▲スタディールームにはすべての席にコンセントが設置されている

▲室内はすべてコンクリート打ち放しだが暖かく過ごせる

▲コモンズの作り方の図(沼野井氏提供)

(2024年6月号掲載)

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