不動産の運営において設備管理をおろそかにしてしまうと、入居テナントの営業に支障を来したり、近隣とのトラブルの原因になったりと、問題が拡大する可能性があります。そのため、常日頃からの設備点検は非常に重要です。今回は、不動産オーナーが運営を行ううえで注意すべき設備やポイント、見逃してはいけないサインについて紹介していきます。
設備管理において最も重要視したいのが、不具合が生じた際、入居テナントの営業に支障が出てしまう設備です。具体的には、エレベーターや電気、給排水に関わる設備になります。これらの設備に問題が発生し、テナントの営業が行えなくなった場合、修繕や工事にかかる費用だけでなく、休業補償費用も発生してしまいます。
エレベーターの不具合部品の故障が原因に
エレベーターについては、エレベーター自体が壊れるといったケースは少なく、通常は制御盤やロープなど部品の故障が原因になります。エレベーターのモデルは25~30年ほどで変わります。モデルの移行とともに、各メーカーは旧型の部品を製造しなくなり、部品の取り寄せに時間がかかってしまうこともあります。
そのため、何か不具合が生じてから対応するのではなく、余裕を持って工事に取りかかることができるよう、定期検査や保守点検は欠かせません。
工事によっては、入居テナントに休業してもらう必要があるでしょう。円滑な関係を継続していくためには、余裕を持ったスケジュールを提案することが大切です。
もし、エレベーターに乗っていて、異音やがたつきに気付いた場合、部品のどこかに不具合が生じている可能性があります。その場合、保守点検を待たずに、早めに専門事業者に点検してもらうことをおすすめします。問題がある状況を放置しておくと、エレベーターと入り口の間に空間や段差が生じ、危険な状況を招いてしまうので、注意しなければなりません。
電気設備は停電の恐れ休業補償の必要もあり
次に、電気設備については、不具合が生じた場合、停電などに発展してしまうことがあります。部品によっては受注生産のものもあるため、すぐに修理できないケースも想定されます。また、部品交換や通電確認を行う際、建物全体を停電させる作業が発生することもあり、全入居者に対して迷惑をかけてしまうことになりかねません。
停電期間が続けば、その期間分の休業補償をする必要があります。さらに、暗いビルという印象を与えてしまうため、資産価値にも悪影響を及ぼします。電気設備の状態は、数値測定を行うことで把握することが可能です。できれば1カ月に1回、最低でも2カ月に1回は点検を行い、不具合箇所の早期発見に努めましょう。
給排水設備は劣化に注意ひび割れや詰まり発生も
最後に、給排水設備についてです。経年劣化による配管のひび割れやさびによる腐食、詰まりが原因になることが多いです。テナントの所有区分で不具合が生じていることもありますが、どの部分に不具合が生じているのか、原因を目視で確認できないことがほとんどです。
目視できるよう外壁沿いに管を設置する方法もあります。その場合、近隣の建物へ越境しないようにすること、工事や修繕などの作業スペースを確保すること、外観を損なわないようにすることに気を付けて設置しなければなりません。
エレベーター、電気設備(高圧電気設備のみ)、給排水設備については、法律で保守点検・定期点検を行わなければならない時期が定められています。違反をしてしまうと罰金が科されることもあるため、注意してください。
緊急時の対応力と提案力管理会社選びの参考に
定期的な点検を実施していれば、設備の不具合に早期に対応できることがほとんどです。ところが、放置してしまうとその分、被る損害が大きくなります。各設備によって対応できる事業者は異なり、事業者が即日対応できるとも限りません。
緊急時の対応や事業者の選定、定期点検のスケジュール管理、適正価格の見定めなどの手間を考えるのであれば、不動産の管理業務は信頼できる管理会社に依頼することをおすすめします。
今回紹介した内容は、どの管理会社でも最低限対応してくれるでしょう。ビルの管理から修繕、空室発生時のリーシング対応まで、全て一括して依頼できる管理会社があれば、窓口を一つにすることもでき、ビルへの理解も深めてもらえるのでベストです。
そして、大切なのは担当者が「緊急時に電話に出て、自身の資産と同様に考え、行動できるか」「修繕箇所の対応時に、オーナー区分とテナント区分に分け、必要に応じた提案ができるか」です。
管理会社を選定する際に、専門知識や技術にあまり差がないようであれば、不動産を通じて長く付き合えるパートナーになることができるかどうかで判断するのも一つの方法です。
店舗流通ネット
ビルマネジメント担当
杉山玲夢氏
2016年、店舗流通ネット入社。駅前商業ビルをメインとしたビル管理業務に15年以上携わり、保守・定期点検から緊急対応、空室対策のためのリーシングまで、ニーズに応じたきめ細やかなサービス対応を実施。法令順守、安全面に配慮した管理を得意とし、ビルの資産価値を高めるためのビルオーナーの視点に立ったビルメンテナンスを行う。
▲経年劣化により穴が開いてしまった配管
(2024年5月号掲載)
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