賃貸オーナー向け月刊情報誌

親の介護問題一人で抱えず皆に共有

 介護と相続は密接な関係だ。たいてい家を継ぐ長男家族が同居するか、近くに住む親の介護を担う。だが、介護の状況を他のきょうだいに共有できないと、その苦労が理解されないばかりか、介護に必要なお金を預金口座から引き出したのにあらぬ疑いをかけられかねない。介護を含めて家を出たきょうだいとコミュニケーションを取り、良い関係を続けることが重要だ。

親や家の状況を日頃から連絡現状を伝え大変さを共有

「介護は相続の始まり」。こう話すのは、NPO法人相続アドバイザー協議会(東京都渋谷区)の理事長であり、自身も地主の長男として家を継いだ平井利明オーナー(東京都立川市)だ。平井オーナーはこれまで地元立川市で600人余りの相続相談を受けてきた。

その経験から円満相続のポイントは、「きょうだいとの良い関係性」だという。特に介護については、きょうだいと状況を共有することが重要だ。

 「相談者から相続が発生してから、自身がこれだけ親の介護で苦労したのに他のきょうだいは理解もせず権利ばかり主張してくるという話を聞くことがあります。でも亡くなってからでは遅いのです。介護の状況は親の生前に共有することで、他のきょうだいからちゃんと介護してくれているということが伝わります。一人で抱え込むことは好ましくないです」

 介護の苦労を一人で抱え込むと、心身的な負担ばかりか、親の預金口座から介護のために使ったお金について、「そんなにかかるのか」と私的に使ったのではないかと疑いをかけられるケースもある。「きょうだいも自分を気にかけてくれているんだと思ってくれます。かえって、状況が分からないとのけ者にされているのではないかと思われることもあります」

平井オーナー自身も2007年に父親の介護を経て相続を経験した。自身は学校卒業後サラリーマン勤めで、転勤族。あまり実家にいなかったが、47歳で退職。実家に戻ると、父親は認知症だった。

当初から施設入所には抵抗があり、自宅での介護を選択。亡くなる一カ月前まで約6年余り介護をした。父親は昼間にデイサービスを利用し、夕方4時に帰宅した。

「後半4年ぐらい下の世話までやりました。これは最後の親から与えられた勉強なんだろうなと思ってやっていました」と振り返る。多くの人は介護をすれば、当然、介護をしてこなかった他のきょうだいよりも多くもらえると思うだろう。

 だが、均分相続の今、裁判になるケースは少なくない。 平井オーナーは姉や弟に介護の状況を報告したり、2、3日介護の体験をしてもらった。入浴、排せつ、おむつ交換、食事の世話など、やってもらった。姉や弟に、長男はこれだけ大変な介護を5年もやってきてくれたんだ、と感謝の気持ちが生まれたのだという。 

 もちろん、長男としては、家業もしっかりやっている上で、親の面倒を見ていることが重要。ゴルフだ、旅行だ、と遊びほうけていては、いざ相続が発生したときにまとまらない。「50代になったらそういう生活には気を付けるべきでしょう。日ごろの行動は大事です」(平井オーナー)

  さらに、もし、きょうだいが近くに住んでいるのであれば、旅行に出かけた際に手みやげの一つでも買ってくることも重要なのだという。「そのおみやげは何がいい、というよりも、長男が気遣っているということが、きょうだいやその配偶者にも伝わるでしょう。そういう積み重ねが重要です」(平井オーナー)

 以上のような行動によって、相続が発生したときは、円満に承継することができたのだという。

円滑に遺産分割協議終わるも、4年後家庭不和になった理由

 遺産分割は無事できたものの、その後に賃貸経営がうまくいかなくなった家族から不満が噴出し、家族内で不和が生じたケースがある。

 「『変な不動産を俺に押し付けやがって』と兄に言われました」と肩を落とすのは大内音幸オーナー(仮名)。2016年に父親が亡くなり、相続が発生。父親は遺言書を残さなかったため、遺産分割を母、兄、妹の4人で話し合った。

 大内家には広大な土地があり、個人と法人で、賃貸住宅や倉庫、駐車場の経営を行っていた。家業は父親のみで行っていた。相続時、母から「父親の見舞いに行った際、『法人は兄が継いでほしい』と直接言われた」と話があった。

 問題は父親の全遺産を誰も把握していなかったことだった。税理士からのアドバイスで、家に残された固定資産税関係の書類をもとに父親の資産を洗い出すことにした。家族の誰もがなかなか遺産整理に着手しよう

としなかったため、大内オーナーが積極的に動いた。後から問題にならないように、父親の確定申告書、法人の場合は決算書をもとに土地ごとに収支が分かるように作成。その

収支表をもとに、家族で話し合った。できる限り不公平にならないよう、家族の要望も聞きながら調整。「協議中、兄は何も言いませんでした。そのため父の遺志通り法人は兄が相続するように提案しました」(大内オーナー)。円滑に遺産分割協議は終わった。

 だが4年後、兄が文句を言い始めた。「兄は相続した賃貸住宅で民泊事業を始めました。ところが、コロナ禍で経営不振になったようで、それを誰かのせいにしたかったのでしょう。こんな分割にしたから変になったんだと言うのです」大内オーナーは、兄には不動産を継ぐ覚悟と準備が足りなかったのではないかと考えている。相続時は、本当に継ぎたいのかという相続人の本心を知った上で、資産分割を行うのが大事なのかもしれない。

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