賃貸業界の今をデータから読み取る特別企画として「事故物件」に焦点を当てる。事故物件専門のポータルサイトが登場したり、お笑い芸人の体験談が書籍として出版されるなど話題性があるが、住む側の本音はどうなのか。983人から回答を得たアンケートを紹介していく。
7割は住むことに拒否感
前の居住者が孤独死、自殺、他殺などにより亡くなった部屋を意味する「事故物件」。専門情報サイトの登場や、マスコミで盛んに取り上げられたことで、広く知られるようになった。興味本位で語られがちな話題ではあるが、物件オーナーにとっては、常に起りうる現実的なリスクでもある。では、世の人々は事故物件への入居についてどのような印象を持っているのだろうか 。
参考になるのが、不動産仲介会社AlbaLink(アルバリンク:東京都江東区)が1月に実施した、事故物件に関する意識調査だ。クラウドソーシングの登録者に無作為に選択式のアンケートを配布、983人から回答を得たものだ。
メーンの質問は「事故物件に住むのはあり?なし?」。その結果は「あり」が28・6%、「なし」が71・4%だった。7割以上の人が、死亡事故のあった物件を避けるという、オーナーにとっては厳しい結果となった。 約3割の「あり」と回答した人も、決して事故を気にしないわけではない。
「あり」の理由(複数回答)を聞いたところ「コスパが良いから」(227票)が突出し、次ぐ「幽霊や心霊現象などは信じていないから」(99票)を倍以上引き離している。事故物件に抵抗はあるが、賃料値下げへの期待があるため、選択肢から必ずしも排除しない、という考えを持つ人の存在が見て取れる。
孤独死・事故死には寛容な回答
一口に事故物件といっても、死因により意識に大きな違いがある。「あり」と答えた人へ「死因の許容範囲」を聞くと「孤独死」は72・6%が許容。コメントでは「亡くなられることは自然なことで、ただ1 人だっただけ」「今は高齢化社会なので、孤独死なら仕方がない」などの意見が見られた。
「事故死」も57・3%と比較的許容度が高かった。一方、「自殺」(16・4%)、「他殺」(6・0%)、「焼死」( 5・7 %) は許容度が極端に低い。この落差は、全ての死因を一様に「事故物件」という概念でまとめること自体に無理があるとすら感じさせる。
なお「全部OK」という回答は10・7%だった。高収入ほど許容度高い傾向 年収別の、あり、なしの分布も興味深い。テレビ番組や一般誌の特集では「収入の低い人が格安の事故物件に住む」という事例が取り上げられることが多いが、実態はそのイメージと多少異なる。
顕著な相関関係はないが、事故物件への許容度は、むしろ高収入なほど高くなる傾向がみられたのだ。要因は定かではないが、収入が高い人は、立地や設備など、住まいへの物理的な要求が高く、心理的なこだわりが相対的に低くなるからかもしれない。 アンケートからは、事故物件に対する根強い抵抗感だけではなく、事故による心理的マイナスと物件そのものの価値、そして賃料を、冷静に比較検討する人々の姿も垣間見える。
事故物件のオーナーとなった際は、死因など事故状況、物件の現況などを個別に検討し、不安感を減らす情報開示の在り方、適切な賃料設定などを考える必要がありそうだ。
減額幅はアパートで38.8%
不動産情報サイト『LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)』では2016年、賃貸および持ち家で、事故物件に住んだ経験のある人、現在住んでいる人458人に、事故物件の売買価格や家賃が相場からどの程度減額されたか調査している。
結果、持ち家と賃貸全体で平均35.5%の減額。特に賃貸は減額率が高く、賃貸アパートは平均38.8%、賃貸一戸建ては38.4%家賃の減額があった。なお、半額以上減額されたとの回答も、全体で41.7%、賃貸アパートで50.7%、賃貸一戸建てで48.4%あった。